2016年9月15日木曜日

697「手帳3」2016,9,15

 そして次のページから「雨ニモマケズ」の詩が9ページに亘って記されています。本物の手帳では51ページから記されているようです。

雨ニモマケズ   風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ   丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク  決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト  味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ  ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ  ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ  小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ  行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ  行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ  行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ  ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ  サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ  ホメラレモセズ
クニモサレズ  サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

 漢字仮名に訳した「雨にも負けず」です。
雨にも負けず   風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫なからだをもち
慾はなく  決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と  味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを  自分を勘定に入れずに
よく見聞きし分かり  そして忘れず
野原の松の林の陰の  小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば  行って看病してやり
西に疲れた母あれば  行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば  行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があれば  つまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し  寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ  褒められもせず
苦にもされず  そういうものに
わたしはなりたい

 賢治の直筆の世界には病苦にありながら自分の理想が語られています。「欲はなく 決していからず」、自らの欲望をこそぎとるように、人のために尽くし人を救い助けることを願い、周りの人が嘲笑されようとも一向に気にしない「サウイフ モノニ ワタシハ ナリタイ」と手帳に記されています。