2020年7月13日月曜日

2096「水害と光害、蝗害4」2020.7.13

 蝗害について興味深い記事を紹介します。最初にイン・ディープさんの2020年2月22日の記事の冒頭の旧約聖書の内容です。
「疫病と…聖書的な災いが現実に:狂気的な数千億のイナゴの大発生による被害範囲がアフリカ、中東から中国までの20カ国以上に拡大。国連は6月までにイナゴの数が「現在の500倍に膨れあがる可能性」を警告

旧約聖書 出エジプト記 10章 04-06節
もしもあなたが私の民を去らせることを拒むのなら、私は明日、あなたの領土にばったを送り込む。ばったが地の面を覆い、地面を見ることができなくなる。そしてそれは、雹を免れて残されていたものを食い尽くし、野に生えているあなたがたの木をすべて食い尽くす。
さらに、あなたの家、家臣の家、すべてのエジプト人の家に溢れる。あなたの先祖たちも、先祖の先祖たちも、この土地に住むようになってから今日まで見たことのないものである。」

 さらに2020年5月28日のイン・ディープさん記事の内容を抜粋して紹介します。
「インドの歴史上最悪のイナゴ襲来のカタストロフに見る世界的な食糧危機、化学物質にまみれる大地。そしてその基本的な原因は異常気象と異常気温だということ
イナゴ襲来の第二波は想像を上回る規模に成長中」

「インドで史上最悪級のイナゴの襲来が発生したことがここ数日伝えられています。
先ほどのインドでの新型コロナウイルスの感染事例が多い地域として、いくつかの州が挙げられていますが、非情なことに、「イナゴの被害の大きな地域もその州と重なる」のです。
5月27日までの時点で、イナゴによる最も大きな被害を受けているのは、ラジャスタン州という北部の州で、他に、マディヤプラデーシュ州、マハラシュトラ州などがイナゴの被害を受けていますが、その光景は、以下の写真のように「現実ではないような」雰囲気があるほどのものです。(虫が嫌いな方にはごめんなさい)
現時点での報道では、過去 30年で最悪というような表現が使われていますが、イナゴの大群はいまだに成長し続けていますので、インドの歴史で最も激しいものとなる可能性もあります。そうなる理由も示すことができます。
まず、以下は、現状についてのドイツ DW の報道からです。
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インドは過去30年で最悪のイナゴの大群と直面している
India faces its worst locust swarm in nearly 30 years
DW 2020/05/27
インド政府が新型コロナウイルスを封じ込めるための戦いを行う中、膨大な害虫が、インドの 50,000ヘクタール以上の耕作地を破壊しており、インドの食糧供給にさらに負担をかけている。
5月26日、インド政府は無人機とトラクターで、サバクトビバッタの大群を追跡し、殺虫剤を散布した。
これはインドが過去 30年近くのあいだに経験した最悪のイナゴの大群の 1つだ。このイナゴたちによって約 50,000ヘクタールの耕作地が破壊され、インドは 1993年以来の最悪の食糧不足の危機に直面している。
インドのイナゴ警告機関によると、ラジャスタン州とマディヤプラデーシュ州では、地域により 1平方キロメートルあたり 8〜 10個の大群が活動しており、マハラシュトラ州やウッタルプラデーシュ州などにも拡大している。
今後、風速と風向によっては、イナゴがインドの首都デリーに向かって移動する可能性があると警告している。
国連食糧農業機関(FAO)によると、サバクトビバッタは通常、6月から 11月にかけて、インド西部とグジャラート州などの一部で発生する。ところが、インド農業省によれば、今年 4月にイナゴの群れが発見されている。
FAO の推定によると、4000万匹のイナゴの群れは 35,000人分もの食糧を食べるという。すでに、インドのイナゴは、ラジャスタン州とマディヤプラデーシュ州の農作物を破壊している。これにより、通常よりも生産量が低下しており、食料品の価格の上昇が発生している。
農業危機とそれに続く食糧インフレは、新型コロナウイルスのパンデミックに対するインド政府の対応を著しく妨げている。
インド政府が新型コロナウイルスの拡散を阻止するために突然、全国的なロックダウンを強要した後、インドの多くの労働者たちが経済的に困難に陥り、何千人もの移民労働者が飢餓で亡くなった。イナゴの群れによる農業危機は、政府の救援活動をさらに妨げている。
ここまでです。
記事に、
> 何千人もの移民労働者が飢餓で亡くなった。
とありますので、すでにインドでは「ロックダウン中に、飢餓による死が発生していた」ということのようです。
なお、なぜインドで今年、このような「通常はないようなイナゴの大量の出現」が起きてしまったのかというと、基本的には、「異常気象」によるものなんです。
たとえば、今現在、インドは「信じられないほど暑い」です。
なんと、まだ 5月だというのに、たとえば、新型コロナウイルスとイナゴの被害に同時に見舞われている北部のラジャスタン州などは、「気温が 50℃に達している」ようなのです。
5月27日の報道より
この熱波の直接的な原因は、サイクロンによるものでした。
先週、インドは「アンファン (Amphan)」というサイクロンに見舞われたのですが、そのサイクロンの反時計回りの大気の流れの循環が「インドの風の方向を変えてしまった」のです。ちなみに、このサイクロンの被害そのものも大きく、インドで 100人以上が亡くなった他、農業にも甚大な被害を与えています。被害を受けた人の数は、450万人に上るとインド政府は述べています。
それ以前も、今年のインドは「とにかく雨が多い」のです。
以下は、5月25日のインドの報道からの抜粋翻訳です。
インド気象庁のデータによると、ラジャスタン州では 3月1日から 5月25日までに 25の地域で、平年の 60%以上の大量の雨量が記録された。さらにマディヤプラデーシュ州では 39の地域で平年をはるかに上回る大量の降雨が記録された。
ウッタルプラデーシュ州とハリヤーナ州でも多くの地域が平年より多い雨に見舞われている。(downtoearth.org)
このような中で何が起きたのかというと、インド研究評議会の専門家が以下のように述べたことが伝えられています。
「サバクトビバッタは、古く乾燥した葉や植物よりも、新しくて柔らかい葉を好むのです。それらのほうが容易に消化されるタンパク質や炭水化物を含んでいるからです。イナゴは、どこに移動しても、そのような若い葉を探すのです」(downtoearth.org.in)
つまり、「雨が多かった中で、イナゴの好きな軟らかい葉のある植物のある面積が格段に増えた」ということになり、それに加えて、異様な気温の上昇もむしろイナゴには好都合で、サバクトビバッタは、砂漠の極限の暑さと乾燥の中でさえ生き残ることができる昆虫ですので、「暑い上に湿気が高く、エサとなる軟らかい植物が多い」という
「イナゴにとってのパラダイス」が作り上げられてしまったようなのです。