今回はIn Deepさんの2025年04月21日の記事を紹介します。
「41000年前の地球の磁場の消失時」に人類はひとりでも生き残っていたのだろうか? (否)
https://indeep.jp/survival-from-the-laschamp-event/
「約4万年前に300年間続いた地磁気の消失事象」
暖かくなったせいか(というか、4月なのに暑かったり)、晴れている日は、毎日、ベランダに蝶がやってきます。
先ほどベランダに出ましたら、今日も二匹のアゲハが飛んでいて、私の 10年近く前の携帯で撮影したボケボケの写真ですので、まったく判別がつかないですが、以下の丸い部分で花に止まっています。
それを見ながら、「きみたちも移動は磁場に頼ってるんだろ?」などと呟きながら(参考記事:人間を含めた「全生物」は磁場により生きている)、部屋に戻ると、「地球の地磁気の消失」についての興味深い研究を知りました。
約 4万年前に発生した極度の地磁気の減少期間であった「ラシャンプ地磁気エクスカーション」の際に人類はどのように生き残ったか、ということについての研究でした。
ラシャンプ地磁気エクスカーションというのは以下のようなものです。
ラシャンプ事象
ラシャンプ事象は、地磁気エクスカーション(地球磁場の短期的な逆転)である。最終氷期中の 42,200年から 41,500年前に発生した。
1960年代にフランスのクレルモン=フェラン近郊のラシャン溶岩流とオルビー溶岩流で発見された地磁気異常から発見された。
ラシャンプ事象は、最初に発見された地磁気異常現象であり、現在までに発見された地磁気異常現象の中で最も徹底的に研究されている地磁気異常現象である
Laschamp event
地磁気異常というか、「地球の磁場が極端に弱くなった時期」という言い方のほうがわかりいいように思います。
このラシャンプ事象時には、
「地球の磁場は、90%弱まった」
とあり、事実上、地球の磁場が消失していたようです。
また、期間は、
「 300年間続いた」
とこの論文にはあり、わりと長く続いたようですが、なぜ地球の磁場の極端な減少が、人類を含めた地球の生物に良くない影響を与えるかというと、一般的な科学的見解では、磁場は、地球へと降り注いでいる紫外線や宇宙線などが直接、地表に到達するのを防御しているからです。
つまり、
「磁場が消失すると、あらゆる有害な宇宙からの放射物が人体に直接降り注ぐため」
とされています。
しかし、それ以上に、「地球の多くの生物は、磁場で移動している」という現実があり、これは、先ほどもリンクしました 10年前の記事にありますが、簡単にいえば、有害な放射線などの問題以前に、
「ほとんどの地球の生物は、適切な地球の磁場の上でしか生きることができない」
と言えるのです。
人間もです。
以前、「有人火星飛行」についての国際的研究 MARS 500 を主導したロシア人科学者のスヴォーロフ博士という方が、インタビューで以下のように語っていました。
アレクサンダー・ウラジミロヴィッチ・スヴォーロフ博士のインタビューより
地球の磁場の外側の空間に滞在する際の低磁気の問題は、いまだに解決されていません。
…脳は誰にとっても最も重要な器官ですが、実験で得られた驚くべき発見としては、たとえば、宇宙飛行士は地球から遠ざかるにつれて、訓練センターのインジケータと比較して内臓の温度が上昇するのです。
なぜ、内臓の温度が上昇するのかは、専門家たちもわかっていません。
ロシアの生物学者たちは、人間の低磁場条件での予備実験においてでさえ、すでに実験の被験者たちの精神的な混乱を記録していると述べています。
つまり、地球の磁場から人間が遠く離れると、脳に強い影響が加わるのです。
In Deep 「人間は地球の磁気圏の外では生存できない」より
スヴォーロフ博士は、
「地球の大気と磁気圏の外側では、生きている細胞は死滅します」
と結論付けています。
もっといえば、「人類は、月にも火星にも行けない」のです。体がそのように作られているのです。火星に飛行する計画は、科学的、技術的な問題がクリアされたとしても、「人間である限り行けない」わけです。どうしても、火星に行きたいのなら、ロボット的なものに任せるしかない。
なお、今回ご紹介する論文を紹介していた記事では、研究した科学者たちは、「その 4万1000年前の現生人類は、皮膚に塗る黄土、衣服、洞窟といった手段を用いてこれらの極限環境に適応していた」ことで生き残ったとしていますが、そんなの関係ありません(笑)。
そもそも、泥や衣服や洞窟では、宇宙放射線を防ぐことさえできません。防ぐことができるのは紫外線だけです。
何より、地場の極端な低下は先ほどのスヴォーロフ博士の言うように、
「人間の内臓や脳の温度を上げて、細胞を死滅させてしまう」
わけです。
つまり、結論としては、
「その 4万1000年前には、現生人類もネアンデルタール人も、すべて絶滅した」
と考えるのが妥当です。
では、なぜ今、現世人類がこの世に今もいるのかということについては、書き始めると長くなりますので、よろしければ、以下の 2021年の記事をご参照いただければと思います。
「人類に単一の起源は存在しない」
ことを突き止めた研究をご紹介しています。
・「人類の祖先の出発点は存在しない」:「種の起源」について科学誌ネイチャーに掲載された国際研究は、現世人類の共通の祖先が存在しない可能性に行き着く
In Deep 2021年2月14日
前書きが長くなってしまいましたが、ラシャンプ事象についての論文を取りあげていた記事をご紹介いたします。これも結構長いです。
「41,000年前の地磁気変動中に増加した宇宙放射線に人類がどのように適応したか」
How humans adapted to increased cosmic radiation during geomagnetic excursion 41 000 years ago watchers.news 2025/04/20
約4万1000年前、ラシャンプ事象として知られる地磁気の変動により、地球の磁場は最大 90%弱まった。この稀な現象により、太陽放射線と宇宙放射線に対する地球の自然遮蔽力が低下し、地表は紫外線エネルギーの増加にさらされた。宇宙天気モデルと考古学的証拠を組み合わせた新たな研究によると、初期の人類は黄土、衣服、洞窟といった手段を用いてこれらの極限環境に適応していたが、ネアンデルタール人はそのような防御策を持たず、それが絶滅の一因となった可能性がある。
ミシガン大学が 4月16日付のサイエンス・アドバンシス誌に掲載した研究論文は、約4万1000年前に発生した、短期間ではあるものの激しい地磁気変動であるラシャンプ地磁気エクスカーション(地磁気変動)を検証している。
この期間、地球の磁場は現在より約 90%弱まり、地球の遮蔽能力が低下し、地表に到達する紫外線(UV)が増加した。
アグニット・ムコパディアイ氏が率いるこの研究は、このエクスカーションが地球磁気圏に及ぼす影響を初めて宇宙プラズマシミュレーションで検証した。
ラシャンプの偏位は、42,200年から 41,500年前に起きた地磁気偏位、つまり地球の磁場の一時的な乱れであり、永久的な極性反転には至らなかった。
この現象は、大きなポールシフトと磁場強度の急激な低下を伴い、最も激しい弱化と双極子の傾きは約 300年間にわたって発生した。この期間は、ヨーロッパと北アフリカの初期の人類が変化する環境条件にさらされていた時期と一致している。
約 5万6000年前にヨーロッパに到達したホモ・サピエンスは、紫外線に対する自然な防御手段として黄土を使用していたと考えられる。
考古学的証拠によると、彼らは黄土を皮膚に塗布しており、紫外線によるダメージを軽減していた可能性がある。この行動適応は、地磁気変動期に太陽光への曝露量が増加した地域において特に重要だった。
この研究はまた、ホモ・サピエンスが紫外線から身を守るために仕立てられた衣服を着用していたことも示している。これらの衣服は、日中に屋外で安全に移動することを可能にした。洞窟は彼らにとって、移動中のもう一つの避難所として機能した。洞窟系に身を隠すことで、彼らは有害な放射線への曝露を最小限に抑えていた。
対照的に、約 4万年前に絶滅したネアンデルタール人は、同様の防御戦略を持っていなかったようだ。
研究によると、地磁気の変動に伴う紫外線の増加への適応が限定的だったことが、彼らの絶滅の一因となった可能性がある。
研究チームは、宇宙天気モデリングフレームワークを用いて、ラシャンプ地磁気エクスカーション中の地球の磁場と大気の状態をシミュレートした。
シミュレーションの結果、昼側磁気圏が地球半径の約 5.3倍(現在の約半分)まで収縮し、宇宙線と太陽高エネルギー粒子の上層大気への浸透が増加したことが示された。
この研究では、磁場の弱体化が大気の循環と組成の変化をもたらしたと指摘されている。放射線の増加が生物圏に影響を与えた可能性は高いが、初期人類への具体的な影響についてはまだ調査中だ。
この研究では、現在発生している同様の地磁気変動が及ぼす潜在的な影響についても調査している。
地球磁場の大幅な弱化は、高エネルギー粒子からの防御力の低下を招き、宇宙放射線への曝露量を増加させる。これは、宇宙天気擾乱の影響を非常に受けやすい衛星運用、地球規模の通信ネットワーク、電力インフラなど、現代の技術システムに深刻な影響を及ぼす可能性がある。
考古学的証拠は、ホモ・サピエンスにおける黄土の使用、仕立てられた衣服、洞窟住居の記録など、本研究の結果を裏付けている。
研究チームには、ドイツの GFZ ヘルムホルツセンターやフィンランドのオウル大学などの機関からの国際協力者が含まれていた。
研究を主導したムコパディアイ氏は以下のように述べる。
「強い磁場がなければ地球は生命を維持できないとよく言われます」
「先史時代の地球、特に今回のような出来事を観察することで、太陽系外惑星物理学を全く異なる視点から研究することができます。当時も生命は存在していました。しかし、それは今とは少し違っていました」
磁場変動は頻繁に起きているという証拠
2024年9月に科学誌パシフィック・ジオロジー誌に掲載された研究では、泥炭堆積物を分析することで、過去 1万年間の地磁気変動を特定した。
この研究では、短寿命の磁場変動が複数回発生した証拠が明らかになり、このような事象がこれまで考えられていたよりも頻繁に発生している可能性があることが示唆された。
研究の主な成果の 1つは、1,700年に 1 度発生する調和振動と多重ボンド現象 (北大西洋の氷河移動現象)の間に明確な関連性があることだ。これらの現象は、地球の気温や環境の変化に関連する重要な気候現象だ。
進行中の磁場変化の兆候
地球の磁場は少なくとも 19世紀半ば以降、徐々に弱まっており、過去 150年間で地球全体で約 10%減少していることが観測されている。しかし、この弱まりは地球全体で均一ではない。
最も顕著な地域的異常の一つは、南大西洋異常帯だ。これは、南米から南アフリカにかけて広がる、磁場強度が著しく低下した領域だ。
(参考マップ)南大西洋異常帯
この地域の磁場強度は世界平均のほぼ半分であり、上空を通過する衛星や宇宙船は高レベルの放射線にさらされ、頻繁に技術的な異常を引き起こす。
同時に、磁北極の移動速度は加速している。
(参考マップ)過去約120年の北極磁の移動
indeep.jp
何世紀にもわたってカナダ北極圏で比較的安定した位置にあった磁北極だが、20世紀後半から急速に移動を始め、現在では年間最大 55kmの速度でシベリア方面に移動している。
世界規模の航法システムの指針となっている世界磁気モデルは、この移動を考慮して、より頻繁に更新されている。
一部の研究者たちは、急速な極移動と地域的な磁場の弱化を、地磁気の偏りの進行、あるいは極性反転(磁極のポールシフト)の初期段階の兆候と解釈している。
一方、このような変化は重大ではあるものの、過去にも同様の変動が見られた際には、完全な移行には至らなかったと警告する研究者もいる。
しかし、現在の時期を特徴づけるのは、変化の速度と規模、そして現代の技術システムが地磁気擾乱に対してかつてないほど脆弱であることだ。
完全な磁場の逆転等が起こらないとしても、磁場強度の継続的な低下と、南大西洋異常域のような弱磁場領域の拡大は、衛星運用、飛行高度における放射線被曝、そして電力インフラの安定性に測定可能なリスクをもたらす。
地磁気の変動は、地表にいるほとんどの人々に直ちに健康リスクをもたらすことはないものの、上層大気と高緯度における放射線レベルの上昇は、航空機乗務員、頻繁に飛行機を利用する人々、宇宙飛行士など、特定の集団に長期間にわたって影響を及ぼす可能性がある。
衛星運用、航法システム、航空、電力網などの技術インフラの混乱は、現代社会に深刻な間接的な影響を及ぼす可能性がある。
________________________________________
ここまでです。
ちなみに、こういう地磁気の消失減少が起きるごとに「多くの生物種が絶滅した」ということがあったとして(理屈ではそうなります)、では、それから地球はどうなるのか、というと、大量絶滅と同時に、
「その地磁気の消失時期に、新しい種が爆発的に誕生する」
のです。
比較的最近の以下の記事で取りあげています。
・地球の磁場の消失は、大絶滅の側面よりも「まったく新しい人類的生物の登場」の側面のほうが強かったりして…と考える
In Deep 2025年3月25日
さらには、2018年に行われた史上最大の遺伝子分析研究により、
「地球上のほとんどすべての生物は、過去 20万年以内に登場している可能性」
が強く示されたのです。以下にあります。
・[特報]ダーウィンの進化論が崩壊 : かつてない大規模な生物種の遺伝子検査により「ヒトを含む地球の生物種の90%以上は、地上に現れたのがこの20万年以内」だと結論される。つまり、ほぼすべての生物は「進化してきていない」
In Deep 2018年6月7日
一般的には数十億年前に地球に生物が登場し、「進化」して現在に至るという考え方が主流ですが、この研究では、それが見事に否定されてしまいました。
どうやら地球の生物種というのは、わりと頻繁に「交代」あるいは「新陳代謝」しているようなんですね。おそらくは人類もです。
それによって以前より強い種が生まれる。
次の磁場の消失の際にも同じことが起きると思います。次の磁場の消失は、計算上では(北極磁の移動距離から)まだ数百年も千数百年もかかると見られますが、いつかは起こります。
そのときが、まさにすべてが変わる時なのだと思われます。