今回はIn Deepさんの2025年6月24日の記事を紹介します。
「ジャパンショック」:日本が米国と世界の市場を麻痺させるメカニズム
またも停戦という空想の夢舞台
ジャパンショック:日本が米国と世界の市場を麻痺させるメカニズム - In Deep
[追記 6/24 午後5時1分]この記事を書いた後、停戦が合意された 1時間後に、イランはイスラエルを弾道ミサイルで攻撃しました。1時間の儚い停戦だったようです。イスラエルもすぐに「激しい報復をおこなう」と報復宣言を行ったようです。
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今朝、イランとイスラエルの「停戦」について、なぜかアメリカ大統領から発表されていましたが、今日の午後 1時過ぎ頃に、「イスラエルとイランの停戦が正式に発効した」と速報されていました。
停戦が発効したとされる後も双方は攻撃を続けていて、停戦とは何かという形而上的な話にもなっています。
しかし、一方で、
> イラン外相は「イスラエルが攻撃を停止すれば応戦しない」と述べていますが、「公式な停戦合意はない」とする発表もあり…
という部分もあり、不透明です。
以下は、アメリカ大統領が発表した「停戦時間の後」のイスラエルメディアの速報です。
イランがイスラエルにミサイル一斉発射、5人が死亡、少なくとも20人負傷
イランは、ドナルド・トランプ米大統領が発表した停戦が発効する予定だった現地時間午前 7時を過ぎても、イスラエルへのミサイル発射を続けた。
イランからのミサイル発射により、イスラエル全土で 1時間以上にわたり少なくとも 6回サイレンが鳴り響き、ベエルシェバでは 5人が死亡、少なくとも 20人が負傷した。
jpost.com 2025/06/24
その後、停戦について合意したのかどうかは不明ですが、以下のように報じられています。何だかわかりにくい話です。
CBSニュースに語った当局者によると、本日早朝、トランプ米大統領が発表した停戦合意に基づき、イランに対する停戦は東部時間午前 12時に発効し、イスラエルは、同日午後 12時に停戦が発効するまで 12時間以内にイランを攻撃する権利があり、その12時間後にはイランとイスラエルの双方によって戦争は「終わった」とみなされる。 OSINTdefender
なお、ここまで敵対している国同士において、「停戦」という意味は、
「単に軍備を立て直すための時間稼ぎにしかならない」
だけであり、少なくとも、これらの国においての停戦は和平とはまるで関係ないものです。これは「ウクライナ停戦という空想の夢舞台」という記事にも書いていますが、仮に停戦したとしても、いつか、さらに大きな軍事力によって、また争いが始まる。今回にしても、最初にイランを攻撃したのはイスラエルなのですから。
場合によっては、停戦の時間稼ぎの間に、イランが「核弾頭」を手にするかもしれない。
ロシアの元大統領メドヴェージェフ氏は 6月22日の X への投稿で、
「多くの国が自国の核弾頭をイランに直接供給する用意がある」
と述べています。こちらに翻訳したものがあります。
「多くの国」がどこを指すのかは不明ですが、核保有国の中で、核拡散防止条約に加入していない国は、北朝鮮、インド、パキスタンなどですので、そのあたりのどれかなのでしょうか。
いずれにしても、これもまた「停戦という空想の夢舞台」という話になる可能性も高そうです。
そんなわけで、今回はこれとは全然関係のない話ですが、国際金融アナリストのラウ・ヴェジス氏という人が、
「ジャパンショック:世界最大の債権国である日本が米国市場を麻痺させる可能性」
というタイトルの記事を寄稿していました。
昨年の…ああ、ちょうど今日ですね。やはり、日本から始まる金融危機の可能性について、以下の記事を書いたことがあります。
・「カナリアが日本の炭鉱の中で中性子爆弾を踏んだ」:日本が導く終末的な金融危機
In Deep 2024年6月24日
ラウ・ヴェジス氏は、昨年 8月5日の日本の株式市場の大暴落のことも取り上げていますが、あれは 1日で 5000円以上も下げた日でした。
その日の In Deep の記事は、話自体はそれとは関係のないものですが、少しふれています。
私個人としては、今年の夏までに、どの分野にしても社会的に非常に重大なことが次々と起きるのではないかと思っていまして(特に合理的な背景があるわけではないです)、戦争に関しては、もう起きているのですけれど、経済や市場にも起きるのではないかなあと考えています。
ブラックスワン的なことですね。
そこで、今回の記事を見ましたので、ご紹介させていただこうと思いました。
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ジャパンショック:世界最大の債権国が米国市場を麻痺させる可能性
The Japan Shock: How the World’s Biggest Creditor Could Cripple US Markets
Lau Vegys
米国政府の地球上で最大の債権者である日本に何か悪いことが起こっており、それがあなたのポートフォリオに非常に深刻な影響を及ぼす可能性があると言ったらどう思われるだろうか。
数週間前にこの話が目に留まり、ずっと書こうと思っていたが、当時は手が回らず、ずっと後回しにしていた。しかし、もうこれ以上無視するにはあまりにも重要な話になってしまったようだ。
何が起こっているのか?
先月、日本の内閣府は最新の経済統計を発表したが、結果は芳しくなかった。日本経済は 1年ぶりに縮小し、0.7%のマイナス成長となった。
これは悪いニュースだ。特に、これが、トランプ大統領の関税措置の大部分が発効する前の出来事だったこともある。日本の経済が今四半期も縮小を続けることはほぼ確実であり、そうなれば日本はテクニカルな景気後退に陥ることになるだろう。
日本の経済について、皆さんはあまり考えていないだろう。ほとんどの(アメリカ)人は考えていない。日本は地球の反対側にあり、アメリカや中国のようにニュースの見出しを飾ることもない。
しかし、日本はただの国ではない。地球上で最大の債権国の一つなのだ。
日本は 3兆ドル (約 436兆円)以上の対外純資産を保有しており、米国債の保有額は 2025年時点で 1兆ドル (145兆円)を超え、世界最大の保有国だ。以下のグラフをご覧いただきたい。
債券だけではない。日本の機関投資家は、米国株、社債、不動産に数十億ドルもの資金を投じている。
しかし、日本が突然その資金を本国に呼び戻す必要が生じたらどうなるだろうか?
それは世界市場に衝撃波を走らせ、金利を上昇させ、誰にとっても借り入れコストを大幅に引き上げることになるだろう。そして、日本は多くの分野に関与しているため、ウォール街を動揺させるだけでなく、次の世界的景気後退の導火線に火をつける可能性もある。
日本の多くの問題
なぜ日本が世界市場を実際に崩壊させられるのかを理解するためには、日本が置かれている不安定な状況を理解する必要がある。そして、それはマイナス成長が 1四半期をはるかに超える状況だ。
日本は深刻な人口危機に直面している。結婚や出産の減少により、日本の人口は 15年連続で減少している。
これ自体は主要国では珍しいことではない。多くの先進国が出生率の低下に取り組んでいる。
しかし、すべての先進国が世界で 3番目に低い出生率(日本のこと)を記録しているわけではない。日本は最近、1.15という過去最低の出生率を記録した。これは前年の 1.2から低下しており、1947年に統計が開始されて以来の最低値となる。
安定した人口を維持するには、出生率が約 2.1 必要であることに留意してほしい。
さらに悪いことに、日本は世界で最も高齢化が進んでいる国でもある。人口の約 30%が 65歳以上だ。
これらの要因を合わせると、2050年までに日本は約 2000万人、現在の人口の約 16%を失うと予測されている。そして今世紀末には、日本は人口の半分以上を失うと予想されている。これは、今ならフロリダ州全体が消滅し、将来的にはアメリカ東海岸の大部分が消滅するのと同じような状況だ。
この危機は老人ホームや病院にとどまらず、経済全体に打撃を与えている。
労働者の減少は成長の鈍化を意味する。退職者の増加は政府支出の増加を意味する。人口置換水準を下回る国は皆、こうした問題に直面しているが、出生率が 1に迫り、人口が地球上で最も高齢化している日本は、まったく新たなレベルの危機に直面していると言えるだろう。
システムを維持するための政府の解決策はあるのか?
お金を借りる。たくさん。日本は何十年もの間、明日はないかのように借金を続けてきたため、現在では先進国の中で最も高い債務対 GDP 比となり、260%を超え、さらに上昇し続けている。
それはいつものやり方だった。金利をゼロに維持し、中央銀行に紙幣を印刷させて国債を購入させるのだ。
日本は何年もの間、それで逃れてきた。
そして現実がやってきた。
計算が通用しなくなったとき
2024年8月5日月曜日のことを覚えている方もいるかもしれない (昨年 8月の株価の暴落)。このことは、市場にとって最悪の日だったと言うだけでは、到底言い表せない。日本の指標である日経平均株価は 12.40%急落し、1987年のブラックマンデー以来の最悪の下落率となった。
売りは日本で始まり、すぐにアジア、ヨーロッパ、そして最後に米国へと広がり、合計すると、たった 1日で世界の時価総額 5兆ドル (約 720兆円)以上が消失した。
株価だけではない。原油、その他の商品、ビットコインなど、あらゆるものが打撃を受けた。
しかし、損失よりも衝撃的だったのは、そのスピードだった。事態はあまりにも急速に悪化し、経験豊富な市場のプロでさえ不意を突かれた。
世界的金融崩壊の引き金となったのは、円キャリートレードとして知られる金融の火薬庫だった。
その仕組みは以下のとおりだ。
円キャリートレードでは、大手金融機関が超低金利で日本円を借り入れ、その安い資金をドルに換え、特に米国など、より利回りの高い海外資産に投資する。
為替レートが 1ドル 100円の時に 1000万円を借り入れたトレーダーを想定してみる。つまり、10万ドルを自由に使えることになる。この資金を利回り 4%の米国債に投資する。1年後には 4000ドルの利息を手にしていることになる。
さらに良いことに、円が 1ドル 105円まで下落すれば、借入金の返済に必要な金額はわずか 9万5238ドルになる。金利差だけでなく、為替変動からも利益を得られるのだ。
実質的には無料の資金だ。ブルームバーグの推定によると、ピーク時には世界中で円キャリー取引の規模が数千億ドル(数十兆円)に達した。トレーダーたちは何十年もの間、このドル箱を搾り取っていた。これを「グローバル・マネー・グリッチ(世界的な資金の不具合)」と呼ぶ人もいた。
しかし、そこには(予想通りの)落とし穴がある。
この戦略は、日本の金利が低く、円安が続く限り有効だ。
どちらかが間違った方向に進んだ場合、取引は破綻するのだ。
2024年にまさにそれが起こった。20年近くも金利をゼロ近辺に維持してきた日本銀行は、ついに政策金利をマイナスから 0.25%に引き上げた。これだけで、円は数週間のうちに 10%も急騰した。
突然、計算が逆転した。トレーダーは円建てローンの返済に、借り入れた金額よりも多くのドルを必要とした。これが激しいポジションの解消を引き起こし、世界中の資産の連鎖的な売りを招いた。
その後は歴史が語っている。
あれはただの予告編
さて、日本銀行は善意から金利を引き上げなかった。8兆5000億ドル( GDP の 260%以上)の債務を抱える日本にとって、わずかな金利上昇でさえも非常に大きな負担となる。
彼らはそうせざるを得なかった。
債券投資家はより高い利回りを求め始め、日本の国債入札は失敗に終わり始めた。すでに国債市場の 50%を保有していた日銀は、単独で国債を購入せざるを得なくなった。国内外の投資家は、国債から逃げ出すか、インフレと為替リスクを相殺するためにより高い金利を要求した。
そこで日銀は屈服した。
そして、2025年の日本の問題は 2024年よりも悪化する見込みであり、好むと好まざるとにかかわらず、金利はおそらく上昇し続けるだろう。
代替案は、債務売却がさらに困難になるだけでなく、円の暴落によって輸入品が破滅的な高価格に陥るという事態を招く。日本は食料の 60%と化石燃料のほぼすべてを輸入しているため、破滅的な高価格になるのは言うまでもない。
しかし、日本の金利上昇は米国にとって問題となる。
日本は 1兆ドル以上の米国債を保有しており、これは他のどの国よりも高い。日本の金利が上昇し、円高が進むにつれて、海外に資金を預ける魅力は大幅に低下する。その資金は、アメリカの借金漬けの資金ではなく、国内に留まるだろう。
日本の財務大臣は最近、米国債保有が貿易交渉における「交渉材料」になり得るとの考えを示唆した。後に撤回したが、そのメッセージは明確だった。困難な時期には、いかなる手段も選択肢の一つとしてあり得るのだ。(※ ) これについては 5月の「日本の財務大臣が米国債を交渉のカードに使うことをほのめかす」という記事をご参照ください。
アメリカ最大の債権国を失うことは、アメリカの世界的な信用力を著しく損ない、ドルを暴落させ、借入コストを全面的に上昇させるだろう。それは消費者にとっての金利上昇、経済の麻痺、そして市場の壊滅的な崩壊につながるだろう。
2024年8月5日が到来した時、私は米国市場が日本の出来事にいかに激しく反応したかに衝撃を受けた。その売りのスピードと規模は、2020年3月の新型コロナのパンデミックによる暴落を除けば前例のないものだった。
今では、あれは単なる予告編だったと私は強く確信している。