今回はIn Deepさんの2022年7月10日の記事を紹介します。
「街灯は消され、レジャーも消え、お湯も配給制、薬もない…ついでに医者もいない…。ドイツの現在の「破綻」の状況を日本もそのうち経験する?」
https://indeep.jp/germanys-miserable-now/
何もないドイツ
いろいろなものが田舎にないことを嘆いている歌を歌っていたのは、吉幾三さんでしたかね。今日のゼロヘッジで報じられていたドイツの現況はそんなようなこととあまり変わらない感じのものでした。なんにもない、のです。
(記事)「社会の平和が大きな危機に瀕している」:エネルギー危機が経済を麻痺させるにつれて、ドイツは静かに閉鎖している
(省略)
この記事で説明、リンクされていた報道などから、「今のドイツ」がどんなことになっているかをご紹介したいと思います。
「今のドイツ」と書きましたけれど、これは、秋以降の多くのヨーロッパに広がる可能性のある話であると共に、もう少し拡大して考えれば、「対ロシア制裁に関わっている西側諸国すべて」に拡大する可能性のある話でもあり得ます。
ドイツの現在の危機的状況は、単純に、「この1年間の電気料金の推移」を見るだけでもわかります。以下は、昨年 7月から今年 7月までのドイツの電気料金の推移です。
ドイツの電気料金の推移
zerohedge.com
これは天然ガスの不足などによるものですが、ガス不足でどんなことが起きているかといいますと、例えば、「家庭でお湯も自由には出せなく」なりました。
「お湯」が配給制となり、冬の暖房シーズンの最高暖房温度は「 17℃まで」と警告が出たのです。
これは、7月8日のゼロヘッジの記事が、ドイツの報道を引用していたものですが、ドイツで 2番目に大きな都市であるハンブルグで、給湯と暖房の制限が当局から警告されました。記事には以下のようにあります。
ハンブルク当局者は、エネルギー危機の中で、住民が給湯配給の準備をするように告げる
ドイツで2番目に大きな都市は、エネルギー危機が悪化するにつれて、お湯の給湯の制限を検討している。
ハンブルクの環境上院議員イェンス・ケルスタン氏 は、 ドイツの新聞ヴェルト・アム・ゾンタークに、「深刻なガス不足の中で、緊急時にのみ温水を利用できるようにした」と語った。
ケルスタン氏はまた、ドイツの日刊紙ハンブルガー・アベンドブラットと話し、 「私たちはほとんどの人が認識しているよりもはるかに深刻な危機に瀕している」と警告した。
彼はハンブルクの住民たちに、シャワー時間を短縮し、省エネシャワーヘッドを設置し、最大の電力節約のためにサーモスタットを近代化するように依頼した。
「今(天然ガスを)貯蓄できればできるほど貯蔵タンクの備蓄量が増え、冬の状況は良くなるだろう」とケルスタン氏は付け加え、冬のシーズンに先立ってより多くの天然ガスを貯蔵できるように、国民は電力を節約する必要があると述べた。
zerohedge.com
正確にいえば、「 1日の限られた時間帯にだけお湯を使うことができる」ということのようです。
さらには、この秋からの暖房シーズンについての「室内気温」にも当局は、言及していまして、以下のように報じられています。
> 現在、ドイツ最大の家主は、秋に暖房シーズンが始まると、午後 11時から午前 6時までの間は、17°Cまでしか暖房熱を上げることができないとテナントに警告している。 (zerohedge.com)
お湯も好きに出せない、冬には「室温は 17℃まで」と決められる。
ドイツは、こういうことになっているようなのですが、フィナンシャルタイムズ紙によると、エネルギー不足の影響は、オフィス、レジャーセンターまで広がり、そして、現在ドイツは街灯を暗くしており、プールも閉鎖していると報じられています。
ドイツはロシアの燃料供給の危機に対処するために外灯を暗くしている
ドイツは、貿易から職場、レジャーセンター、住宅への電力危機の印象が広がり始めているため、お湯が配給となり、外灯を暗くし、プールを閉鎖している。
ロシアが最終月にドイツへの供給を大幅に削減することによって引き起こされた燃料費の大幅な増加は、1973年の石油ショック以来、ヨーロッパ最大のドイツの経済システムを最悪の電力危機に陥れた。
「状況は劇的を超えています」とドイツの住宅企業連盟の責任者であるアクセル・ゲダシュコ氏は述べる。「今、ドイツの社会的平和は大きな危機に瀕しています」
ウクライナでのロシアの紛争をめぐる緊張が高まる中、専門家たちは事態がさらに悪化するのではないかと懸念している。
ロシア政府は 7月11日に、ドイツへの主要なパイプラインであるノルドストリーム1を、予定されている通り、メンテナンスのために 10日間閉鎖する。
ベルリンの多くの人々が、パイプラインは決して再開されないのではないかと心配している。
newsncr.com
先ほど書きました現在のドイツの状況は、まだロシアから天然ガスが、パイプライン経由で来ていた時の話ですので、この報道にある「パイプラインは決して再開されないのではないかと心配している」というようなことが、仮にあれば、
「もっと事態は悪化する」と見られます。
1年で6倍くらいに値上がりした電気料金がさらに上昇するかもしれないですし、暖房や温水の制限はさらに厳しくなるかもしれません。レジャー施設などに関しては、「ロックダウンと同様の長期の閉鎖」に陥る可能性があるかもしれません。
「なあ……あんたら何やってんだよ……」と、つくづく思います。
対ロシア制裁からたった3ヶ月で、現代のドイツ建国史上、見たことも聞いたこともないような苦境に陥っている。たった3ヶ月ですよ。あと半年したらどうなるかと。
ドイツの報道では、現在、ドイツでは、「薪ストーブ」の需要がかつてないほどになっているのだそうです。しかし、現実的には、木材も価格上昇の影響を受けている上に、石油やガスと異なり、薪ストーブは煙突などいろいろと設備が必要ですので、コストがさらに上昇すると書かれていました。
現在のドイツの首相は、ミスター・ヘイグ氏ことオラフ・ショルツ氏という方で、彼は世界経済フォーラムのメンバーですが、苦しくなっていますね。
ヨーロッパの世界経済フォーラムの指導者では、英国のボリス・ジョンソン首相が辞任しましたが、その直後に、やはり世界経済フォーラムの若きリーダー出身のエストニアの女性首相も辞任しました。
[記事] 次々消えていく世界経済フォーラムの指導者たち。ジョンソン英首相に続き、エストニアの女性首相も辞任へ 地球の記録 2022年7月10日
エストニアの首相の辞任の理由は、英国とは異なりますが、
「国会で支持閣僚が一気に去っていき、辞任せざるを得なくなった」
という点では同じです。
ドイツの首相も厳しい感じですね。まあ、世界経済フォーラムの話はいいとして、予想をはるかに上回る「制裁の超ブーメラン」がドイツの経済と生活を殺し始めています。
対ロシア制裁が始まって、すぐに、「これにより西側の一般の人々に死の危険が迫っている」と感じました。以下の 3月の記事で少しふれています。
[記事] アメリカの異常な孤立を見て思う、日本を含めた「対ロシア制裁国」の劇的な人口減少の原因は、戦争よりも凍死や餓死によるものになっていくのではという懸念
In Deep 2022年3月10日
そして、4月のこちらの記事では、カナダのグローバル・リサーチの記事をご紹介していますが、そのタイトルは「西側の制裁の真のターゲットは、果たしてロシアなのか」というものでした。
この作者は、対ロシア制裁の目的は、「わざと西側に貧困と絶望をもたらし、グレートリセットの議題を進めるためなのではないか」と勘ぐっています。
まあ、そのあたりは、私にはわからないですが、ミスにしても故意にしても、このドイツの状況は、もうそう簡単には元には戻ることはできない感じです。
最近はドイツの報道をよく見るのですが、対ロシア制裁のブーメランとはまた別の話として、「いろいろと大変」のようなのです。少しご紹介します。
深刻な薬不足と医療従事者不足
薬不足は、日本でもかなりそうなのですが、それと比較にならない薬不足がドイツで起きていることが報じられています。
それも「風邪薬や鎮痛剤といった、非常に一般的な薬が不足している」ようなのです。
以下は、7月6日のドイツ国内の報道からの抜粋です。
鎮痛剤が少なくなってきている:あなたがするべきこと
現在、ドイツの薬局ではさまざまな医薬品が不足しており、薬剤師たちは将来を見据えている。
鎮痛剤が不足している
薬不足では、特に鎮痛剤が影響を受けているが、たとえば、現在、同じ有効成分を使用する子供用の解熱シロップはほとんどない。不足は有効性分のイブプロフェンだけでなくパラセタモールにも影響を及ぼしている。
そして、有効成分のキシロメタゾリンが不足しているため、秋に向けて、おそらく子供に投与する点鼻薬にも影響を与えると見られる。製薬大手のテバは、子供用の鼻スプレーの冬の在庫をキャンセルした。
メーカーは、「残念ながら、現在、製品をいつ再配達できるかについての情報を提供することはできません」と述べた。
antenne.de
このドイツの薬不足の原因は、ロシア制裁ではなく、中国やインドなどからの原材料調達の問題だそうで、ドイツには著名な製薬企業が数々あるにも関わらず、原材料がなく「製薬会社が医薬品を製造することができない」状況なのだそう。
この報道は、
> 必要な薬を在庫しておくことをお勧めする。
で締めくくられています。
別の報道では、「ドイツでは、すでに多くの風邪薬が入手できなくなっている」と報じています。
それと共に、現在のドイツにはもうひとつ大きな問題があり、これは、対ロシア制裁とも原材料の調達困難などともまったく関係ないですけれど、
「医療従事者の間にコロナが爆発的に流行していて、医療が危機的な状況にある」
ようなのです。
以下の記事などで、取りあげています。
[記事] ドイツで「完全にワクチン接種された医師と看護師」の間でコロナ感染状況が爆発的となり、医療従事者不足に。医療崩壊の危機が迫る 地球の記録 2022年7月6日
これはドイツ各地で起きていることのようですが、特に、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン大学病院(UKSH)という著名な大病院では、
「コロナ感染で、200人以上の看護師と 70人の医師を配置できなくなっている」
ということのようです。
その後の報道として、医療スタッフたちに間でのコロナ感染の大流行のために、「集中治療室(ICU)がまともに稼働できなくなっている」ことが昨日報じられていました。
以下に翻訳したものがあります。
(報道) ドイツの医療従事者のコロナ感染拡大により「多くの集中治療室が稼働できない」状態に (2022/07/09)
その記事にあるマップを見ますと、地区によっては「集中資料室の稼働が、ほぼ 0%」という場所も散見されます。
ドイツでは、医師や看護師などを含めて、医療従事者たちには 2回のワクチン接種が義務化されていて、つまり「 2回ワクチンを接種した人たちに感染の爆発が起きている」ということになります。
これも日本でも起こり得ることかもしれないですね。何しろ、現時点での日本のコロナ感染の主流は、数の上では「 2回接種者が主流」となっています。
以下は、7月7日の東京の新たなコロナ感染確認の「ワクチン接種 / 未接種」の区分ですが、以下のようになっていました。
この日の東京の全体の感染確認数は、8,529人です。
・ワクチン 2回接種 5,416人
・ワクチン未接種 1,611人
実際は、2回接種をした割合が 7割、8割とありますので(これが真実の数かどうかは定かではないですが)、そこから考えて計算しますと、決してワクチン 2回接種者のほうが感染しやすいということではなく、「おおむね同じ」ということになります。
しかし、2回接種者のほうが社会には多いと考えますと、今後の新たなパンデミックは、
「数の上ではワクチン 2回(あるいは 3回)接種者主流のパンデミック」
ということになっていきそうです。
そして、ここには多くの医療従事者も含まれるでしょうから、ドイツと同じようなことになり得る可能性はあるのかもしれません。そうはならないことを願っています。
というのも、「ドイツでは、コロナ以外の通常の緊急医療にも支障が出ている」からです。緊急手術などができなくなっている事例が出ていることが報じられています。
いずれにしましても今のドイツは「あらゆるものが消失して閉鎖されている」ようです。
しかし、今回の記事は、当然ながら「ドイツのことを心配しているわけではない」です。
そうではなく、今のドイツの状況が広く、特にエネルギーと食料の乏しい西側の主要国に広く拡大していくのではないかという話です。
ドイツはエネルギーはなくとも、農業国ではありますので、そう簡単に「飢餓」という概念は出てこないでしょうが、食料生産さえ乏しい主要国はたくさんあります。
本当に「何にもなくなる」という時が……それが、今年なのか来年なのか、2025年なのかはわからないですが、迫っているのかもしれません。
それにしても、ドイツの医薬品不足は結構ショックな話で、子どもの点鼻薬もないらしいですから、すでに医薬品不足が進行している日本の場合、必要な医薬品は、ある程度は備えておかれるのもいいかと思います。
今年が物質的に普通の生活を送ることができる最後の頃なのかもしれないですね。