2025年1月27日月曜日

3685「10年後にアメリカは存在するのだろうか」2025.1.27

今回はIn Deepさんの2025年01月18日の記事を紹介します。


「10年後にアメリカは存在するのだろうか」

https://indeep.jp/the-us-budget-outlook-2025-to-2035/


今後10年間で米国の債務はさらに3700兆円増加する見通し

最新のメルマガで、「米国の持続不能性」のようなことについて、少しだけふれたのですけれど、今日の米ゼロヘッジの記事で、

「米国は今後 10年もつのだろうか?」

という疑問を抱かずにはいられない数々の数値を見ました。

アメリカ議会予算局という政府機関による「 2025年から 2035年までの予算の展望」についての資料を取り上げたものです。

これは民間の試算ではなく、政府機関による展望です。

わりと長い記事ですので、まず、そのゼロヘッジの記事を最初にご紹介します。

暗澹とした米国の先行きが描かれます。

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アメリカ議会予算局(CBO)は、米国の債務が今後10年間で24兆ドル(3750兆円)急増し、その後さらに悪化すると予測している…

CBO Projects US Debt To Soar By $24 Trillion Over Next Decade, And Then It Gets Much Worse...

zerohedge.com 2025/01/18

議会予算局(CBO)は、政治に関与せず超党派であると主張する人もいるかもしれないが、実際には、体制の側近の一部と見なされていない政治家をバスの下に投げ捨て、米国で山積しているすべての財政問題を「台所に流し込む」ことにほとんどためらいはない。

その政治家とは、第47代米国大統領に就任しようとしているドナルド・J・トランプ氏であり、マスク氏のお気に入りのプロジェクトである DOGE (政府効率化省)にもかかわらず、トランプ氏の第2期政権下では、すでに途方もない 36.2兆ドル (約 5600兆円)に達している米国の負債が本当に爆発するのを間もなく見ることになるだろう。

最新の議会予算局の 2025年から 2035年の 10年間の予算と経済見通しによれば、状況は絶望的に悪化している。

議会予算局が提示した経済見通しは、いつものようにばかばかしいものではあっても、決して衝撃的ではない。

予算局は、米国の GDP が年間 1.8% で成長し、インフレが魔法のように横ばいの 2.0%、失業率が 4.4% で高止まりし、フェデラルファンド金利が 3.2% (10年国債利回り 3.8%に相当)と予測しており、今後 10年間で景気後退はゼロになると予想している...。

... この成長の資金がどのように調達されるかを考えると、さらに興味が湧く。

もちろん、その答えは持続不可能な赤字をさらに何兆ドルも増やすことだが、予算局によると、この赤字は決して終わることがないように見えるため、持続可能だそうだ。

そこで財政赤字予測から始めると、予算局は 2025年の連邦財政赤字が 1兆9000億ドル(約 300兆円)になると予想しており、この数字は 2035年までに 2兆7000億ドル(約 420兆円)に増加する。

そして、2025年には GDPの 6.2%に相当し、その後、歳入が支出を上回るペースで増加するため、2027年には 5.2%に減少するが、このやや好ましい傾向はすぐに反転し、その後の年には支出が再び歳入を上回るペースで増加し、2035年までに財政赤字は再び GDPの 6.1%に等しくなる。

これは予算局によると、「過去 50年間の財政赤字の平均である 3.8%を大幅に上回る」数字となる。

言うまでもなく、実際の赤字額ははるかに大きくなるだろう。なぜなら、たとえわずかな景気後退であっても、政府支出の急増(つまり、借金による赤字の増大)は確実であり、それによって成長が加速することはないからだ。

状況はさらに良くなる。期限切れの TCJA 、つまりトランプ減税を延長するであろうトランプ氏を罠にかけようとして、予算局は興味深いことに、長期財政赤字予測を 10億ドル削減したが、これは成長率上昇などによるものではなく、「立法上の変更や技術的変更(つまり経済的でも立法上のものでもない)により財政赤字予測が押し上げられた」にもかかわらず、「個人所得税からの予想歳入が増加する」と予測しているためだ。

その結果、2025年から 2034年までの累積財政赤字は 1兆ドル減少し、22.1兆ドルから 21.1兆ドルになると予想されている。

そうすれば、トランプ減税が延長された 1年後に予算局は、財政赤字の予測を再び大幅に上方修正し、トランプ氏を厳しく罰し、非難することになるだろう。

米国の財政赤字が急増する本当の理由は、税金とはほとんど関係がなく、米国の債務、あるいはその債務に対する、すでに成層圏レベルに達している利子のすべてが関係しているが、今後 3年間は状況はほぼ正常であるものの、その後は急激に増加することがわかる。

リリースには以下のように書かれている。

2025年の連邦政府支出は総額 7兆ドル(約 1000兆円)となり、これは GDPの 23.3%に相当する。2028年までこの水準に近い水準で推移し、その後増加し、2035年には GDP の 24.4% に達する。この増加の主な理由は、社会保障とメディケアへの支出の増加と純利息費用の上昇だ。

残念ながら、米国政府の歳入にはそのようなホッケースティック効果(急騰)は見られない。

米国政府の歳入は 2025年に 5.2兆ドル、つまり GDP の 17.1%に達し、2027年までに GDP の 18.2%に増加する。予算局によると、これは「 2017年税法の条項の期限切れ予定による」とのことだが、当然期限切れにはならず延長されるため、歳入は増加しない。

予算局はこれを承知しながらも、次のはるかに厳しい予測で打撃を与えるまで 6~ 12か月待つことになる。

しかし、2017年の税制改革法がなくても、予算局は、GDP に占める歳入の割合は今後 2年間で減少し、2029年には 17.9% に落ち込み、 2035年には 18.3% 前後で横ばいになると予測している。実際には、この数字ははるかに低く、トランプ減税の延長により、おそらく 15%程度になるだろう。つまり、予算局の予測よりも大幅に悪くなるということだ。

悲しいかな、これもまた大惨事であり、それは予算局の債務予測を見ればすぐにわかる。

なぜなら、国民が抱える債務(社会保障に充てられる債務は都合よく除外されている)は、現在 28.2 兆ドル(約 4400兆円)だが、この数字は 2035年までにほぼ倍増し、52.1 兆ドル(約 8100兆円)に達すると予想されているからだ。

しかし、待ってほしい。GDP が増加しても、相対比率は改善するのと同時に、負債も増加するのではないだろうか。

実はそうではない。悪名高い予算局の「破滅のグラフ」が示すように、国民が抱える負債は毎年増加しており、そのペースは GDP (の増加)よりも速いからだ。

実際、2025年から 2035年にかけて、負債対 GDP 比は 100%から 118%に膨れ上がる。これは、予算局が認めているように、「アメリカ国家の歴史上、どの時点よりも大きい」額だ。

さて、予算局が今後 10年間で米国の財政状況が若干改善するとの報告書を発表した理由は、米国の財政状況が実際に改善しているからではなく、むしろトランプ氏と共和党を罠にかけるためだった。

ABC ニュースが指摘しているように、「この分析は、大規模な支出削減と組み合わせない限り、赤字をさらに拡大するような減税に傾倒している新共和党政権にとって厳しい状況を示している」。

実際、トランプ氏が提案した 2017年の減税延長案は今年で期限が切れる予定で、新たな減税と合わせると 4兆ドル(約 625兆円)を優に超える可能性があり、次期財務長官候補のスコット・ベセント氏は 1月16日、減税がなければ経済が崩壊する可能性があると警告した。

「米国には歳入の問題はない」とベセント氏は指名承認公聴会で主張した。「問題があるのは支出の問題だ」

彼の言うことは正しいが、さらに大きな問題は、債務を発行し、酔っ払いのように浪費することに慣れている国にとって、裁量的支出であれ義務的支出であれ、いかなる支出も削減することは前例のない経済的破滅につながるということだ。

米国経済全体に占める税収の割合は 50年間の平均に近いが、政府支出は引き続き増加傾向にある。

その主な理由は、総支払利息が前例のない 1.2兆ドル(約 187兆円)に達していることである。この数字は、金利が一時的に下がったとしても、総負債額は増え続け、金利の低下を相殺する以上のものとなるため、今後下がることはまずないだろう。

一方、国家安全保障と社会プログラムへの裁量的支出は来年 1.85兆ドル(約 290兆円)に達する。予算局は、裁量的支出が GDP の 5.3%に相当し、半世紀平均の 7.9%から減少すると、これらの分野の支出がすでに下降傾向にあると予測している。

予算局のフィリップ・スウェーゲル局長は 1月17日の記者会見で記者団に対し、純利息費用が財政赤字の大きな要因であり、「今後数年間、純利息費用は防衛プログラムまたは非防衛プログラムの裁量的支出額と同程度になると予測される」と語った。

もちろん、これらすべては景気後退がなく、人口動態が変わらないことを前提としているが、残念ながら、そのどちらの想定もばかげている。

人口の高齢化に伴い、社会保障とメディケアのせいで政府支出は大幅に増加するだろう。この 2つの制度は有権者に人気があり、多くの共和党員と民主党員が同様に守ると誓っているが、持続不可能な方向に進んでいるという明らかな兆候がある。

スウェーゲル局長は「われわれはすでに高齢化社会に突入しており、社会の高齢化が義務的支出を促進している」と語った。

また、米国人女性が子どもを持つ年齢が遅くなり、出産数も減るため、「出生率の変化が社会の高齢化のパターンを加速させることもある」と同氏は述べた。

連邦債務の追跡などを行っているピーター・G・ピーターソン財団の最高経営責任者(CEO)マイケル・ピーターソン氏は声明で、「議員らは年末に期限切れとなる税制政策の範囲を検討するにあたり、少なくとも『財政的損害を与えない』という約束をすべきだ」と述べた。

「彼らは予算の小細工を避け、予算局の今回のような中立的かつ無党派的な推定に基づいて想定すべきだ」とピーターソン氏は語った。

残念ながら、米国にとって、法外な借金で賄われた支出によってもたらされた存在の必然的な結末を変えるには、今や遅すぎる。

実際、正常化や「財政的損害を与えない」という点では、その船はすでに出航しており、私たちはハッピーエンドを望んでいるが、政府効率化省が失敗し、避けられない米国の崩壊を阻止できるものは何もないと予算局にいる最も聡明な頭脳たちが認めたときに何が起こるのかを私たちは恐れている。

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ここまでです。

債務に対しての「利子」ですが、この記事には、利払いが、

> 防衛プログラムまたは非防衛プログラムの裁量的支出額と同程度になる

とありますが、昨年、経済学者の EJ・アントニ氏という方が、利子について、さらにわかりやすい例えをしていました。以下です。

連邦債務の利子は 6月に徴収された米国の個人所得税全体の 76%に相当する。これは財務省の最大の収入源だが、その 4分の 3が利子だけで消えてしまう。このことを議会は知っているのだろうか?

BDW

米国の個人所得税全体の 76%が債務の利払いで消えているのです。

そして、上の記事にもありましたように、米国の債務は、現状で日本円での 5000兆円などを超えているわけですが、そこに今後の 10年間でさらに 3700兆円など増えていくと予算局は見積もっているわけです。

持続可能なんでしょうか?

もちろん、日本もまた人の国のことが言えるような債務状況ではないですが、それにしても、米国は金額のスケールが大きいので、数字を見ているだけで迫力があります。

国際投資家のニジャンブルーノ氏という方は、最近、寄稿した文書で以下のように述べていました。

寄稿文「2025年:連邦債務バブルが崩壊する年」より

最も可能性の高い結果は、米国が通貨切り下げを通じて増大する防衛費と国内債務の両方を支払い、一石二鳥の策を講じようとすることだ。

だからこそ私は、通貨(ドル)の価値がますます低下していくことが米国政府の債務スパイラルの必然的な結果であると確信している。

それは彼らが逃れることのできない、自己永続的な破滅のループだ。

まるでブレーキのない暴走列車に乗っているようだ。

2025年は、国家債務に関するこれまでの主流の考え方が崩壊し、これが明らかになる年になるだろうと私は考えている。

崩壊するのは以下のような考え方だ。

・「私たちは自分たち自身でそれ(負債)を負っている」

・「赤字は問題ではない」

・「国債はリスクフリーのリターンだ」

・「国の借金は紙幣を印刷できる限り維持できる」

・「米国がデフォルトすることは決してない」

これらは長い間、多くの投資家たちが信じてきたばかげた比喩だった。2025年は、これらのナンセンスを信じる人々が厳しい現実を突きつけられる年になるかもしれない。

Nick Giambruno

以下は、2024年の世界の債務額の上位10カ国です。

 

visualcapitalist.com

債務対 GDP の率が高いのはダントツで日本ですが、世界全体の債務に占める割合では、米国が 35%などとなっていて、世界の債務のかなりの部分をアメリカが占めていることがわかります。

そして、現在、世界全体の国家債務の額は、102兆ドル、日本円でいえば、約 1京6000兆円に膨れ上がっています。

米国も含めて、地球全体が債務により破裂していく様相が露呈していく少し未来の世界を想像します。