今回はIn Deepさんの2025年8月4日 の記事を紹介します。
「約80年周期の社会の激変サイクルの渦中にいる私たち。そして、アメリカの実質的な国家負債が、日本円で「2京円」を超えているという事実」
https://indeep.jp/strauss-howe-generational-theory-and-us-today/
約80年前の終戦や原爆投下、そして預金封鎖を思い出す
おそらくアメリカ人だと推定される人が、以下のような投稿をしていまして、何となく、その気持ちに納得した次第です。
アメリカ旅行
Mr. Nobody 氏の投稿
お金を中心にすべてが回るシステムの中で生きるのは疲れる。どの場所もお金を取るように設計されていて、どの瞬間にもコストがかかり、逃れることはできない。それは容赦ない。人生はまるでリースされているようで、座る場所もなく、休息する時間もなく、すべてに値段がついている。ただもう一つの瞬間、もう一つの支払い。
今の私は、エアコンをつけて、パソコンの前にいるわけですが、こういう中でも当然、瞬間瞬間に刻一刻コストが積み上げられているわけで、確かに今生活の中でコストがかからない瞬間はありません。
そんなことは当たり前だと言われれば、まあ、当たり前なんでしょうけれど、こういうものから解放されるには「劇的なリセット」しかないのだろうか? と思うことはあります。
先日の記事において、余談でちょっとふれた「ストラウス・ハウ世代理論」という 1990年代にアメリカで提唱された理論に少しふれました。
アメリカ旅行
これは 85年(あるいは 80年)ごとに近現代史で起きてきた「大きな転換(および、そのようなことにつながる事象)」が、少なくともこれまでの歴史では起きてきたことを示す理論です。
たとえば、終戦と世界初の原爆投下は 1945年のことでしたが、その 80年後は現在の 2025年です(85年周期なら 2030年)。
そして、来年 2026年は、もしかすると、ひとりひとりの日本国民にとっては、終戦よりも大きかった「ある出来事」から 80年後ということになります。
それは 1946年 (昭和21年)に施行された「預金封鎖」です。
正確には「金融緊急措置令」という法令で、新札の発行と共に、旧紙幣はこの法令の発令から 2週間後に使用できなくなり、それはすべて銀行に預け入れなければ価値を失うというようなものでしたが、実はそれが預金封鎖の最大の目的ではありませんでした。
以下は、当時の新聞ですが、「けふ(今日)から預金封鎖」という文言の横に、
「解除は財産税徴収後」
日本円預金
とあるのがおわかりだと思います。
当時の新聞より
この時の預金封鎖の日本政府の大きな目的は、預金を封鎖することそのものではなく、国民の財産状況を把握することで、そして、
日本円預金
預金封鎖の間に、国民の財産(現金、不動産など)の調査を行い、それに高い税率(最高税率 90%)をかけることにより、徹底的な財産の没収を行って、国の借金返済に充てること。
だったことが『日本銀行職場百年史』に記録されている、この時の大蔵大臣だった澁澤敬三氏の言葉により判明しています。
戦争により極端に悪化した財政を立て直すために「税金という名目」で、国民の財産の 90%を徴収するという手段だったのですね。
これに関しては 10年くらい前の記事ですが、以下のふたつの記事に書いています。
・カルバナクの衝撃 : サイバー攻撃での世界の金融システム崩壊が早いか、それともNHKが特集した「預金封鎖」がそれより早いのか
In Deep 2015年2月19日
日本円預金
・久しぶりの雪の中で思う 21世紀の預金封鎖とか、気候の近い未来とかの「厄介で具体的な現実」のこと
In Deep 2014年2月4日
政府が「全身全霊で国民の全財産(全部じゃなくて 90%ですが)を奪いに来る」という点では、「大奪取」なんていう言葉にも似た感覚もあります。
この「大奪取」という言葉は、今年のこちらの記事にありますが、国際投資家のニック・ジャンブルーノ氏という方が、以下のように述べていたことなどにもふれました。
ニック・ジャンブルーノ氏の寄稿文より
必要なのは、破産の波を引き起こす大きな危機だけであり、世界の中央銀行の背後にある隠れた勢力は、すべての人の株式、債券、および借金で賄われたあらゆる財産を奪うことができるようになるだろう。
証券口座、銀行口座、年金、その他の金融口座に保有していると考えている資産はすべて一夜にして消えてしまう可能性がある。
重要なのは、これには銀行口座の法定通貨も含まれるということだ。
覚えておいてほしいのは、不換紙幣(現金の紙幣)は破産した政府の裏付けのない負債だということだ。
さらに、銀行に通貨を預けたら、それはもはやあなたのものではなくなる。技術的にも法的にも、それは銀行の財産であり、あなたが所有するものは銀行の無担保負債となる。
私たち日本は、政府からの「大奪取」をすでに経験している、いわゆる大奪取経験者としての大先輩ということになります。
日本円預金
逆にいえば、「国家もまた本能的な生き物としての有機体である」とも言えそうではあり、つまり、生物は「死ぬことがわかると、それに対してがむしゃらにあがく」という性質がありますが、それと似ています。
1946年の時の日本は戦後のとんでもない債務の中にあり、そのままでは、おそらく完全に破綻していた。それを解消するためには、国民全体から資金を強制的に徴収するしかなかったということにもなります。
つまり、大奪取の前提は「国家的あるいは世界的な大破綻」ということになりそうです。
そのような破綻に最も近いのが、ドイツか日本か、あるいはアメリカなのかはわからないですが、最近アメリカの「債務」に関する派手な記事を読みました。
アメリカの現在の国家債務は、一般的に 37兆ドル (約 5400兆円)と言われています。この数値でもかなりのものなのですが、
「実際のアメリカの債務は 151兆ドル (2京2000兆円)に及ぶ」
という内容の記事でした。
アメリカ旅行
このあたりまでの数字となると、もはや架空の数字的にも感じまして、想像も難しいですが、それが実際のようです。
記事は長い上に、後半に詳細なそれぞれの項目を説明しているのですけれど、前半の部分だけをご紹介します。
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アメリカは37兆ドルもの負債を抱えていると思っているかもしれないが、実際はもっとひどい
Think America Owes $37 Trillion? It’s Far Worse Than That
Stark Realities with Brian McGlinchey 2025/08/02
アメリカ政府がどの程度赤字に陥っているかと聞かれると、財政に関心のあるアメリカ人の多くは、アメリカの国家債務が 37兆ドル (約 5400兆円)に達したと答えるだろう。
この公式発表の数字でも十分に悲惨だが、アメリカの真の財政状況はさらに、はるかに悪い。ほとんど公表されていない財務省の報告書によると、アメリカの債務総額は実際には 151兆ドル(約 2京2000兆円)を超えている。
この大きな乖離は、連邦政府が企業に課しているのと同じ会計基準を自らに課していないことに起因している。
発生主義会計(費用が発生した時点で認識する会計)ではなく、ワシントンの権力者たちは利己的に、単純な現金主義会計を用いて、費用が支払われた時点でのみ認識している。
その結果、連邦政府の債務に関する議論は、財務省証券、国債、債券からなる国債のみに焦点を当てている。
しかし、年に一度、あまり知られていない報告書が、アメリカ政府のバランスシートをより正確に反映している。ジャーナリストや公務員からはほとんど注目されていないものの、財務省は政府の財政状況を詳述した年次報告書を議会に提出することが義務付けられている。
重要なのは、この報告書の提出を義務付けた 1994年の法律が、「未積立債務」、つまり履行を保証するための専用資産や収入源がないまま行われた債務を反映することを義務付けている点だ。
未積立債務の中でも特に大きなカテゴリーの一つは、将来の連邦職員および退役軍人給付だ。
2024年度末時点で、これだけで 15兆ドル (約 2200兆円)の債務が計上されていた。しかし、最も大きな未積立債務は、アメリカの社会保障債務、主に社会保障とメディケアから生じている。年度末時点で、これらの債務は総額 105.8兆ドル (約 1京6000兆円)と莫大な額に達した。
これらおよびその他の未積立債務を、公的に保有されている国債およびその他の債務に加えると、2024年度末には総額 151兆3000億ドル(約 2京2000兆円)に達する。
これを、推定 7兆9000億ドルの米国政府商業資産(有形固定資産および 金保有とされるものを含む)で相殺すると、ジャスト・ファクトの分析によると、米国全体の純損失は 143兆ドル (約 2京1000兆円)となる。
ハートランド研究所の執筆記事で、ジャスト・ファクトのジェームズ・アグレスティ所長は、このほとんど理解不能な総額について次のように述べている。
「この 143兆ドルという額は、連邦準備制度理事会の推定によると 169兆ドルとされる建国以来アメリカ人が蓄積してきた純資産の 85%に相当する。これには、貯蓄、不動産、企業株、民間企業、さらには自動車や家具といった耐久消費財など、あらゆる資産が含まれる」
これらの数字は、2024年9月30日時点の政府の立場を反映したものだ。その後数か月で状況は大幅に悪化しただけでなく、あなたがこれを読んでいる今も猛烈なペースで悪化しているのだ。
問題の最大の部分を占める未積立債務を除いても、国家債務だけで 1時間あたり約 1億5600万ドル (約 230億円)の割合で増加している。
予算をめぐる論争は、私たちを救わない。議会での議論は、歳出プロセスにおいて議会の採決を必要とする裁量的支出に集中しがちだ。
しかし、アメリカが着実に破綻へと向かっているのは、いわゆる義務的支出、つまりすでに制定された法律によって固定化された支出によるものなのだ。
政府が自動操縦で破滅へと向かっていることを示す最も不吉な兆候かもしれないが、義務的支出による連邦政府支出総額の割合は 1965年以降、34%から 2024年には 73%へと 2倍以上に増加している。これは、わずか 2年前の 2022年には 71%だった。
(略)
今、連邦政府は 143兆ドル (2京1000兆円)の負債を抱えており、これは米国世帯 1世帯当たり 108万5022ドル (約 1億6000万円)の負担に相当する。
歴史を振り返ると、これは政府の債務不履行に終わるだろう。米国では、債務不履行は明確な債務不履行ではなく、財務省と連邦準備制度理事会が共謀して 債務返済のために無から新たなお金を創造し、急激な物価上昇を引き起こす可能性が高いだろう。
ロン・ポール氏(元下院議員)は 6月のデイビッド・リン氏との会話で以下のように述べた。
「彼らは債務を返済できないので、債務を清算しなければならない。彼らはデフォルトしないだろう。財務省証券のために必ずいくらか支払うことになる。彼らがやろうとしているのは、偽札で債務を返済することで債務を清算することだ」
________________________________________ここまでです。
4年ほど前、アメリカの軍事分析組織であるディーゲル(当時の私は、どういうわけだか「ディーガル」と勘違いしていました)が、
「 2025年には、アメリカを含む西側諸国の人口と GDP が極端に減少する」
ことについて書いていたレポートをご紹介したことがあります。最初にふれたのは、2021年のこちらの記事です。この頃は日本でワクチン接種が始まった時期で、記事の前半はそのことにふれています。
結果として、ディーゲルの言う「 2025年」という年代については、まったく、そのようなことにはならなかったのですが、ディーゲルがこの予測を発表したのは 2014年のことで、しかも、非常に緻密な分析で知られている組織でもあり、
「いつかはこの数値が実現する」
と私は考えています。
ディーゲルのその際の報告書は、今はこちらに保存されていますが、アメリカなどは、
「今より人口が 2億人減る」
という予測となっていました。
その報告書の中で、ディーゲルは以下のように書いていました。
2014年10月26日のディーゲルの報告書より抜粋
…数年前、中国の格付け機関である Dagong は、米国の実体経済を中国、ドイツ、日本の経済と比較したレポートを発表した。その結論は、米国の GDP は米国政府によって公式に報告された 15兆ドルではなく、5兆ドルから 10兆ドルの間であるというものだった。
政府発表の公式データ、特に経済データは、ある程度、偽造、改ざん、あるいは歪曲されていると私たちは考えている。
歴史的に、旧ソ連が崩壊の何年も前から偽の統計を捏造していたことはよく知られている。西側諸国も含め、今日でも他の国々は、自国の実態を隠すために数字を捏造している。自国の政府統計の中に、個人的な経験からすると信じがたいものや、あまりにも楽観的で他国の統計としか思えないものを見つける人は少なくないだろう。
archive.is
経済版の「大本営発表」というような感じでしょうが、これはどの国でも行われていることだとは思います。
ちなみに、前半のほうに書きました「ストラウス・ハウ世代理論」によれば、この理論の提唱者たちが、1990年代に予測した「次の転換 (2025年から 2030年の間と予測されます)」には、次の四つの可能性があると書かれています。
詳しい部分は先週のメルマガに書いたのですが、項目だけ抜粋しますと、以下のようになります。
ストラウス・ハウ世代理論による次の転換で起こり得る4つの可能性
「第1の可能性」 人類の終焉を意味する可能性がある。すべてを破壊し、何も残さない人類滅亡のハルマゲドンとなるかもしれない。
「第2の可能性」 近代の終焉を意味するかもしれない。科学、文化、政治、そして社会の完全な崩壊が起こる可能性。
「第3の可能性」 アメリカの終焉を意味する可能性。
「第4の可能性」 人類や文明、アメリカの終焉を迎えることなく、新たな世紀が訪れる。
このうちのどれかが来る可能性が高いと述べていました。
「第4の可能性」が一番穏やかでしょうか。
「第1の可能性」が今後数年で来るという可能性は、やや考えがたいですので、そこまではないでしょうが、「場合によっては」というようなことのようです。
ストラウス・ハウ世代理論が面白いのは、その周期を 85年(あるいは 80年)としているところで、現在の人間の寿命とかなり合致しているところですね。普通の寿命で生きていれば、人生で一回くらいは、経験したことのないような社会の激変を体験できるようです。
私たちは体験できますかね。