<絶食療法の歴史と意義>
もとおと宗教的背景を持つ修行としての断食は現代になって近代医学的な立場から観察されるようになり、やがてわが国独自の療法として発達した。昭和24年以来、東北大学産婦人科が治療法に取り上げ、絶食療法という名を与えた。その後、東北大学の心療内科に受け継がれ、肝庇護、補液、絶食期間の短縮などの改良が加えられ、いわゆる東北大学方式絶食療法として定着した。昭和55年、日本絶食療法学界が発足している。
一般に心身症は身体、感覚、感情、思考、行動、環境などの諸要因が複雑に絡み合い、相互に影響を及ぼす形で病的な恒常性(病的なバランス)を維持していると考えられる。それゆえ治療はこれらの各要因に、個別的でなく、同時に働きかけるものが理想的である。
絶食療法は比較的短期間に、生体に急激なストレスを負荷し、病的なホメオスターシスを揺さぶり、自己調整機能=自然治癒力の強力な発動を得て、生体をより健康なホメオスターシスの再統合へと向かわせるものである。
奏功のメカニズム
身体的には、カロリー、電解質の外部からの補給が断たれるため、生体のエネルギー源は糖質から体内蓄積脂肪に転換せざるおえなくなる。急激な代謝面の変化が絶食導入の早期から誘発される。血糖は低下し、肝グリコーゲンは2,3日以内に消化しつくされるともいわれ、血中脂質やケトン体(体の脂肪組織が分解し、肝臓で変化したもの)が高値を維持する。
脳組織もまた、その代謝エネルギーを糖質からケトン体に転換せざるをえなくなり、脳内の代謝過程の変調が生じてくる。すると同時期は脳波はα波の増加、徐波化などの変化を生じ、自律神経機能、内分泌機能にも広範囲な変調をきたす。
このような身体変化と平行して、依存症、被暗示性が高まると経験的にいわれている微妙な意識の変容状態が生じ、これまで病態になかば固着され、融通性を欠いていた意識は、微妙に柔軟性のある視点を抱くことが可能となるのである。
(参考文献・鈴木仁一氏「心身症の最近の治療法」<心身医学>日本心身医学会・1987年VOL・27No2)
30年前の心身症治療の論文ですが、当時は絶食療法と表現していましたが、断食での身体への変化、心身症への奏功は的を得ているのではないかと思います。
断食をすることで飢餓状態になります。体は強烈なストレスである意味でパニックになり、これまであった病的なホメオスターシス(自己恒常性)が崩れ、自己調整機能、自然治癒機能の発動で、生体をより健康的なホメオスターシスの再統合へ向かわせることが起きます。私たちの身体は遺伝子情報として先祖が生き抜いてきた中で会得していていた諸々の情報が保存されているのでしょう。人類の歴史は現在の様な飽食の時代は稀で、多くは飢餓と背中合わせがほとんどです。
この体を使わせてもらっている自分の顕在意識では未知の食を断つという経験により、眠っていた体の凄い能力が起動して、置かれた環境に応じてその必要機能にスイッチが入るのです。
50回ほど断食を経験しているとこのメカニズムはそうだよなと実感できます。何度も経験していると飢餓状態で糖質燃焼モードから脂肪燃焼モードの切り替えの変化が良く分り、その対処法も心配なく出来ます。しかし初めての方はその切り替え時の体の変調に驚き、不調、苦痛、不安と心配に襲われるのです。
しかしそれも断食を行う環境によってかなり軽く出来ます。それは環境によって身体能力を高めることが出来るからです。そこで環境設定に生体エネルギー理論と技術の活用が効果絶大です。