今回はIn Deepさんの2023年7月6日の記事を紹介します。
「精神疾患の根本原因は「ミトコンドリアの機能障害」という説を知り、今の生活環境は、それをもたらすものばかりであることに愕然とする」
https://indeep.jp/causes-mitochondrial-dysfunction/
多くの薬が状態を悪化させる原因はここにあるのかも
先日、ベンゾジアゼピンについての記事を書かせていただきました。
[記事] ベンゾジアゼピンの使用と「断薬」が、脳損傷、自殺念慮と関連していることが過去最大の調査研究で判明 In Deep 2023年7月2日
ベンゾジアゼピン系の薬剤がどんな症状に対して処方されるかというと、圧倒的にメンタル性の症状や疾患に対して処方されます。今は、メンタル疾患の名称が増えましたが、細かい区分は関係なく、パニック障害や不安障害など、不眠に対して、あるいは、一部の抗うつ剤などが含まれます。
上の記事では、このベンゾジアゼピンについて、長期連用は良くないというようなことを書きました。
頓服として使うことまで封印することもないでしょうが、多くの場合、日々の連用という状況になりがちで、それが、結果的に脳神経障害などを起こすきっかけとなる「可能性」があるということを書きました。
話は変わりますが、最近、
「ミトコンドリア機能不全が精神疾患の原因である可能性が高い」
ということを、米ハーバード大学の精神医学教授であるクリストファー・パーマー博士が述べていたことについて、米エポックタイムズが記事にしていました。
パーマー博士は、以下のように述べています。
「ミトコンドリアが正しく機能しない場合、不安、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神障害を引き起こす可能性がある」
今回はこの記事をご紹介しようと思うのですが、この「ミトコンドリアの機能障害」という言葉を聞いて、なんというか「パラドックスに満ちた社会だなあ」とは思いました。
例えば、「ミトコンドリアにダメージを与える薬剤」というものは、医学的に知られていて、ニュージーランド医薬品医療機器安全局というような部局が一覧を載せたりしていますが、もう少しわかりやすく書かれてある記事には以下のような薬剤が含まれています。ミトコンドリアにダメージを与える薬剤はものすごく多いのですが、その中の一部の抜粋です。
「ミトコンドリアにダメージを与える薬」より抜粋
・抗炎症薬および鎮痛剤 / アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク(日本名:ボルタレン)、フェノプロフェン、インドメタシン、ナプロキセンなど
・抗精神病薬/気分安定剤 / クロルプロマジン(日本名:ウインタミン)、フルフェナジン(日本名:フルメジン)、ハロペリドール(日本名:セレネース)、リスペリドンなど
・抗不安薬 / アルプラゾラム (日本名:ソラナックス)、ジアゼパム (日本名:セルシン、ホリゾン)など
wellnessresources.com
ニュージーランド医薬品医療機器安全局のページには、さらに何種類かの抗うつ剤 (三環系抗うつ薬)がリストされています。
上の一覧にある抗不安薬のソラナックスは、日本でも幅広く処方されていますが、アメリカでは、その濫用により死亡者が続出している薬でもあります。
[記事] 日本では数百万人が服用しているあまりにも一般的な処方薬であるベンゾジアゼピン系の薬がアメリカで殺人ドラッグになり始めている
In Deep 2019年12月9日
アメリカだけではないようで、スコットランド保健社会局のグラフでは、英国でもベンゾジアゼピンによる死亡は急激に増加しているようです。
gov.scot
アメリカもそうなんですが、ここで示されていますように「 2015年頃から急激にベンゾジアゼピンによる死亡が増えている」ことが示されます。
2015年頃って何か急激に社会が変化した時でしたかねえ…。
ちょっとこの理由はわからないのですが、オピオイドによる死亡数が急激に増えたのも、この頃からでした。
それはともかく、先ほどの「ミトコンドリアにダメージを与える薬」の中に、抗精神病薬や気分安定剤、抗不安薬などが含まれているわけです。
そして、ハーバード大学の教授は、
「ミトコンドリア機能不全が精神疾患の原因」
だという。
ミトコンドリアのダメージが原因である可能性がある精神・神経疾患で使われる薬にもまた、ミトコンドリアにダメージを与える可能性がある……。
パラドックスだとは思われませんか?
「これじゃ、薬での精神疾患の完治はないわな」と思わざるを得ません。
私自身にしても、「パニック障害が完全に治ったのは、ベンゾジアゼピンを完全にやめた」あとからでした。数年かかっていますが。
他にも今の生活の中に多数
他にも、コロナ以降の生活の中にも「ミトコンドリアにダメージを与えるものが数多く存在」します。
たとえば、
・消毒剤に用いられる第四級アンモニウム塩
がそうです。
[記事] 多くの消毒剤に用いられる第四級アンモニウム塩は、人間の生存に必須の「ミトコンドリア」を殺す In Deep 2021年2月24日
ここでご紹介した医学誌の記事には、以下のようにありました。「塩化ベンザルコニウム」というのは「第四級アンモニウム塩」の混合物です。
(2017年4月の医学誌より)
> 結論: 塩化ベンザルコニウムは、ヒト角膜上皮細胞および、薬理学的に適切な濃度でも、レーベル遺伝性視神経症変異を有する細胞のミトコンドリアを阻害し、これが塩化ベンザルコニウムの眼毒性の基礎であることを示唆している。iovs.arvojournals.org
これは、眼細胞についてのものですが、目は露出しているので影響を受けやすいということなんでしょうが、吸入してしまえば、肺や消化管を含めて、ほぼ全身の細胞が同じことになります。
あと、「スパイクタンパク質」もです。以下は、2021年のマサチューセッツ工科大学のステファニー・セネフ教授へのインタビューからの抜粋です。
(ステファニー・セネフ博士へのインタビューより)
> さらに、健康なヒトの内皮細胞にも、同じ偽ウイルス粒子を投与しました。これら(スパイクタンパク質のみの)偽ウイルスの粒子が内皮細胞の ACE2 受容体に結合すると、内皮細胞のミトコンドリアの損傷と断片化が起こり、関連組織に特徴的な病的変化をもたらしたのです。In Deep
こういうように、今の生活環境は「ミトコンドリアの働きを阻害するものばかり」というようなことになっていまして、仮に、ミトコンドリアの機能障害が本当に「その後の精神疾患と関係していく」とすれば、現在のような生活環境ですと、なかなか、明るくはない近い未来があるのかもしれません。
なお、「ミトコンドリアとは何か」ということについては、専門的な説明は何だか難しいのですが、以下のようなものです。
記事「健康であることの条件は、細胞の中のミトコンドリアがカギを握る!?」より
…一般的に、ヒトの体は約37兆個もの細胞でつくられています。ミトコンドリアは、その一つ一つの細胞の中に数百〜数千個含まれています。単純計算しても約3700兆個〜3京7000兆個ものミトコンドリアが、ヒトの体に存在することになります。
この膨大な数のミトコンドリアは、呼吸による酸素を取り込んでエネルギーを生み出す、いわば人体の「エネルギー工場」ともいえる重要な働きを担っています。
fukumitsuya.co.jp
金沢大学の増田和実教授は、「ミトコンドリアは、細胞の生死を司る存在である」とまでおっしゃっています。
ともかく、今の私たちは、そのミトコンドリアが損傷をとても受けやすい生活環境の中に暮らしているということは言えそうです。
ハーバード大学のクリストファー・パーマー博士の記事をご紹介します。
基本的には「食事の改善で精神疾患が改善できる」という内容で、「へえ」とは思いましたが、その方法が「ケトジェニック食に変える」というものでした。
ケトジェニック食は炭水化物を抑える食事法で、健康そのものへの是非は私には何ともいえないですが、精神疾患には非常に効果的であることが示されているようです。
精神疾患の根本原因について、ハーバード大学の教授が語る
A Root Cause of Mental Illness: Harvard Professor
Epoch Times 2023/07/02
精神疾患の根本的な原因は何だろうか?
長い間、この差し迫った質問には誰も答えられないままだ。
多くの場合、患者たちは明確な説明を求めており、たとえば、「遺伝によるもの」または「うつ病はセロトニンの欠乏である」などの説明に遭遇する。
実際には、精神疾患は多くの研究者や科学者たちにとって謎であり、混乱の原因となってきた。医学の進歩にもかかわらず、精神疾患の根本的な原因は不明のままだ。
しかし、精神医学における最近の進歩は、このパズルにピースを与える可能性がある。
ハーバード大学の精神医学教授であるクリストファー・パーマー博士は、精神疾患とミトコンドリア機能不全の関係に関する何千もの研究論文の点と点を結びつけてきた (論文)。
パーマー氏によると、この集団研究は、精神障害に対して現在行われている治療法に対する懸念を引き起こしているという。
2016年に精神科医たちが新たな道を歩み始めた重要な瞬間は、統合失調感情障害の患者の減量を支援したときだった。その患者は重度の精神疾患に苦しんでいただけでなく、向精神薬の服用中に経験した体重増加による自尊心の低下にも悩まされていた。
パーマー氏は当初、統合失調症の患者の症状を、低炭水化物のケトジェニック食に切り替えることで慢性的な幻聴や妄想が止まるとは考えていなかったと語っている。しかし、それが起きた。
彼はすぐにこの介入を他の患者にも使い始め、同様の効果、時にはさらに劇的な結果を確認した。
この経験がパーマー教授に、食生活の変化が重度の精神疾患にどのように役立つかを理解する科学的な旅を始めるきっかけを与えた。
パズルのピースを組み立てる
パーマー氏は、代謝と脳の健康の関係を明らかにする数十年にわたる科学研究を発見した。
パーマー氏は次のように語った。
「この分野では、これまで結びつけることができなかった多くの点が結びつけられ始めています」
2022年11月、パーマー氏は「Brain Energy」というタイトルの最先端の本を出版し、ミトコンドリア障害がすべての精神疾患の根本原因であるという彼の発見と理論を強調した。
パーマー氏は、代謝とミトコンドリアに関する数十年にわたる研究に基づいて、精神障害は脳の代謝障害であると確信している。
これは、これらの精神疾患の状態は永続的な欠陥ではなく、根本原因を特定して対処することで修正できることを意味する。この洞察は、統合失調症や双極性障害などの症状が生涯にわたる障害であるという概念に疑問を投げかけている。
「統合失調症や双極性障害などのレッテルを貼られた人でも、病気を寛解させ、治癒し、回復することができるのです」とパーマー氏は断言した。
「確かに、それは私たち(精神科医)が今日まで人々に伝えてきたことの、多くの理論に反していますが、回復は可能なのです」と彼は付け加えた。
ミトコンドリア機能不全とは
細胞生物学を深く掘り下げると、細胞内のエネルギー生成を担う小さな細胞小器官が明らかになる。ミトコンドリアと呼ばれる構造は、脳細胞を含むすべての細胞が正常に機能するために不可欠なものだ。
ミトコンドリアが正しく機能しない場合、心血管疾患、高血圧、肥満、2型糖尿病などのさまざまな健康上の問題が発生する可能性がある。
パーマー氏は、ミトコンドリアが正しく機能しない場合、不安、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神障害を引き起こす可能性があると指摘する (論文)。
脳が効率的に働くためには、かなりの量のエネルギーが必要だ。ミトコンドリアが十分なエネルギーを生成しない場合、脳の構造や機能に異常が生じ、精神疾患を引き起こす可能性がある。
パーマー氏は、ミトコンドリアの機能不全は脳にいくつかの変化を引き起こし、それが精神疾患の発症を引き起こす可能性があると主張する。これらの変化には、神経伝達物質レベルの変動、酸化ストレス、炎症が含まれる。
画期的な理論
精神障害の原因がミトコンドリア機能不全である場合、根本的な問題に対処する治療法は従来の手段よりうまくいく可能性がある。
ほとんどの精神障害の標準治療である薬物療法と認知行動療法(CBT)は、症状を管理できる場合もあるが、病気を治すことはできない。
パーマー博士は、20年以上にわたって臨床研究を行っており、精神疾患の最も治療抵抗性の高い症例に焦点を当てているが、精神疾患に苦しむ患者の多くがミトコンドリア機能不全の兆候も示していることを発見した。
同氏は、根本的なミトコンドリア障害に対処することで、多くの場合、精神的健康状態を改善できると述べた。彼の患者の中には、うつ病、精神病、幻覚などの軽度から重度の症状の寛解を経験し、投薬量を減らしたり中止した人たちもいる。
精神科の薬は一部の患者には短期的には効果があるが、性欲の低下、自殺の危険性の増加、体重増加などの副作用が生じることがよくある。
「これらの治療法 (投薬など)のリスクと利点を長期的に真剣に検討する必要があると考えています」とパーマー氏は語った。
ただし、パーマー氏は、現在精神科の薬を服用している人たちは、決して、医療提供者のアドバイスなしに自己判断で投薬を中止してはならないと警告した。
ケトジェニック食は期待できる
研究と臨床経験に基づいて、パーマー氏は、食事、運動、ストレス軽減、十分な睡眠などの常識的なライフスタイルの変更を含む (論文)、ミトコンドリア機能不全の影響を軽減するための数多くの戦略を提案した。
ある食事介入が精神疾患の患者に最も効果的であることが証明されている。
たとえば、ケトジェニック食は 1920年に遡り、てんかんの治療に初めて使用された (論文)。高脂肪、中程度のタンパク質、低炭水化物の食事は、細胞内のミトコンドリアの数を増加させ、その機能を高めることが示されている (論文)。
ケトジェニック食がミトコンドリアの健康に利益をもたらす方法の 1つは、ケトン体の生成によるものだ。
体がケトーシスにあるとき、体は、より効率的な代替燃料源として、貯蔵脂肪からケトン体を生成する。これらのケトンは、エネルギー需要をミトコンドリアに大きく依存している脳細胞を含む細胞にエネルギーを提供する。
ミトコンドリアは、セロトニンやドーパミンなど、気分や行動に影響を与える化学物質である神経伝達物質の生成を助ける。
ケトジェニック食は砂糖や炭水化物が少ないため、インスリン抵抗性も改善する。インスリン抵抗性は、新しいミトコンドリアの生成を妨げる可能性がある。インスリン抵抗性は、ミトコンドリアの機能不全、エネルギー産生の低下、脳細胞を含む細胞損傷を引き起こす。
地平線上の希望
パーマー氏は以下のように語った。
「私たちは、双極性障害や統合失調症の人々が病気を寛解させた数百の症例を持っています。現在、科学者たちはこれを追求しています」
「現在、重篤な精神疾患に対するケトジェニック食の対照試験が少なくとも 10件進行中です。パイロット試験の結果をすぐに公表する準備を進めているところです」
「この画期的な理論は、今後の精神疾患を概念化し、それを治療するための全く新しい方法を切り開きます。研究はすでに進行中であり、急速に進歩しており、今日の実際の人々に実際の結果をもたらす可能性があります」