2023年8月12日土曜日

3151「自閉症と腸内細菌の関係」2023.8.12

 今回はIn Deepさんの2023年8月2日の記事を紹介します。


「自閉症と腸内細菌の関係が特定され、治療法の可能性が示される(2年間で50%の改善)」

自閉症と腸内細菌の関係が特定され、治療法の可能性が示される(2年間で50%の改善) - In Deep 


自閉症の「腸内細菌起源説」がかなり確定的に

米国エポックタイムズが、「自閉症の要因としての、腸内細菌環境の特定の微生物の変化」について言及した論文を紹介していましたので、ご紹介したいと思います。

アメリカでは、公的な発表を信じれば、過去にないペースで自閉症の子どもたちの数が増加しており、今年の春に CDC が発表した数字では、

「アメリカの 8歳の子どもの 36人に 1人が自閉症である」

となっていました。以下の記事にあります。

[記事] 米国CDCが、アメリカ人の子どもの「36人に1人が自閉症」と発表。やや過大な数である気がしつつも、日本も子どもの神経とメンタルの状態が今後著しく悪化すると確信できる理由 In Deep 2023年3月27日

 


tacanow.org

1970年には「 1万人に 1人」だった自閉症の子どもの数が、現在は、36人に1人となったということが伝えられています。

この数が完全に正確かどうかはともかくとしても(個人的には、やや大げさな数値のようにも思いますが)、「過去 50年で極端に増えた」ということは現実のようです。

自閉症の子どもたちが生まれる特定の原因はわかっていませんが、この 50年で急激に増加したのなら、「この 50年間の生活の中に何かある」とはいえるわけで、それが何かはわからなくとも、ここ数年の医学では、

「腸内細菌環境のバランスの悪化と関係がある可能性がある」

とされてはきていました。

たとえば、2018年の米国の研究では、「母親の腸内細菌環境が、生まれてくる子どもの神経状態と関係している」という研究が発表されていました。

以下の記事にあります。

[記事] 自閉症の子どもが生まれる決定的な要因が米バージニア大学の研究者により特定される。それは「母親の腸内細菌環境」。その予防法も初期段階ながら提起される

 In Deep 2018年7月30日

  

これについては、2016年に米国で出版された『あなたの体は 9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』という著作を読んだ時に、そのことを知りました。

この中に、乳幼児期に「抗生物質」を服用することによって後発性の自閉症を発症した事例が挙げられています。

以下のようなことが書かれています。

・破傷風菌類が腸内で繁殖することで、毒素を出してそれが脳に到達し、自閉症になるケースがあることが分かった。原因の一つは抗生物質の使用である。腸内の破傷風菌の繁殖を阻止する細菌類を抗生物質で殺してしまうことで、破傷風菌が繁殖する。

・人の脳は乳幼児期に集中的に発達・形成される。その時の腸内微生物の様相によって性格は影響される。乳幼児期の抗生物質の使用は危険を伴う。

・自閉症に関して、特に生後18か月以内に抗生物質の治療を受けるのは最大のリスクとなるようだ。アレルギーに関しては、2歳になるまでに抗生物質の治療を受けた子供はのちに喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症を発症する率がそうでない子供と比べて2倍も高い。

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ともかく、お母さんのお腹の中にいるとき、あるいは、生まれた後などに、何らかの理由で、腸内細菌環境のバランスが崩れることで(具体的には、消滅しては困る特定の腸内細菌が死滅することで)自閉症だけではないですが、何らかの疾患になりやすくなると。

 

まあ……特に、今はワクチンの大規模接種キャンペーンの後だけに、お母さんの問題などを含めて、いろいろと思うところもあります。端的に言えば、「さらに増えそうな気がする」のです。

いろいろと要因はあるのでしょうが、先ほどリンクした記事の後半で、要因として考えられることを、論文等を引用して取り上げています。

 

要因1:アセトアミノフェン(カロナール)

要因2:脂質ナノ粒子とスパイクタンパク質による腸内細菌環境の崩壊

要因3:過剰な消毒による腸内細菌環境の崩壊 

を私は挙げていますが、他にもいろいろと要因がある社会であるとは思っています。

エポックタイムズで紹介している論文の内容は、一言でいえば、「糞便移植の効果について」です。以下が、ネイチャーに掲載された論文です。

(論文) 腸-脳軸のマルチレベル分析により、自閉症スペクトラム障害に関連する分子および微生物のプロファイルが示される

Multi-level analysis of the gut–brain axis shows autism spectrum disorder-associated molecular and microbial profiles

以下は、その論文のニュースリリースで、タイトルで内容がわかやすいかと思います。

(記事) 糞便移植後2年で自閉症の症状が50%近く軽減

Autism symptoms reduced nearly 50% 2 years after fecal transplant

 

この治療法が万能なのかどうかはわからないですが、そのこととは別に、これらからわかることとして、むしろ「予防」という観点からは、以下のことは言えそうです。 

・妊娠しているお母さんは、化学物質、薬品、ワクチンを含む異物をできるだけ避ける

・乳幼児は、抗生物質を含む薬剤をできるだけ避ける。また、腸内細菌に影響を与える可能性の高い「過剰な消毒」を避ける。 

ということになりますでしょうか。

つまり、「昔ながらの普通の生活をする」というのがベストなのですが、それができないのが現代社会でもあります。

エポックタイムズの記事はかなり長いですので、そろそろご紹介させていただきます。

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新しい研究で自閉症と腸の関係が検証される

New Research Validates Autism’s Link to Gut  Epoch Times 2023/07/31

包括的な研究は腸内細菌プロファイルの明確なパターンを自閉症に結び付け、新しい治療法を示唆


研究者たちが、自閉症スペクトラム障害の微生物の特徴を特定した。

これは、腸内微生物叢がこの神経学的症候群にどのように影響するかを明確にする重要な発見だ。

43人の研究者たちによって発表されたデータに基づく研究は、自閉症が主に遺伝的疾患であるという考えに異議を唱え、この疾患の急増の背後に環境要因がある可能性を示唆している。

腸内マイクロバイオームに生息する何兆もの微生物(細菌、ウイルス、真菌、その他の微生物)が、その微生物の特徴の基礎となっている。

この研究では、特定の腸内微生物に関連する可能性のある自閉症特有の代謝経路を見つけるために、以前に公開された 25のデータセットを再分析することが含まれていた。シモンズ財団の自閉症研究イニシアチブ(SFARI)で生まれたこのメタ分析は、 6月26日に Nature Neuroscience 誌に掲載され、この研究は、腸内環境の改善を示した自閉症患者 18名を対象としたマイクロバイオームに焦点を当てた脳の症状の治療に関する 2019年の長期研究とも一致している。

アリゾナ州立大学の「マイクロバイオームを通じた健康のためのバイオデザインセンター」の教授であるジェームス・アダムス氏は以下のように語った。

「自閉症ではマイクロバイオームが変化し、それが生化学の変化に関連しており、それらの変化が消化管や神経機能に影響を与える可能性があるというさらなる証拠が得られました」

 

増大する自閉症の影

自閉症スペクトラム障害は、遺伝的、生理的、行動的パターンを示す不均一な症状であり、単一の原因は見つかっていない。通常、小児期に診断され、現在(の米国)では 36人に 1人の子どもが罹患しているとされているが、わずか 2年前は 44人に 1人だった。

自閉症を研究する上での障害には、重度の症状を持つ子どもの検査が難しいことや、被験者の兆候や症状を観察することが難しいことが挙げられる。それが神経学的疾患であるという事実が、研究をさらに困難にしている。

マイクロバイオームの広大さと相まって、自閉症において胃腸の問題が果たす役割を定量化することが困難になり、物議を醸してもいる。

研究の責任著者の一人で独立コンサルタントのジェイミー・モートン氏は、この研究の目標の 1つは、この関係について合意を形成することであったとエポックタイムズに語った。

モートン氏は、研究者たちがアルゴリズムをデータに適用したときに観察されたつながりに驚いたと述べた。彼らは、自閉症の子どもの対照と定型の発達をした子どもたちの対照を並べて配置し、遺伝子発現、免疫系の反応、食事などの形質を調べた。

「自閉症における腸内細菌の代謝経路と人間の代謝経路との間にこのような明確な重複が見られたことはこれまでにありませんでした」

「経路」とは、ある分子が別の分子に加工されたり、一連のプロセスで化合物が変化したりして、特定の物質を体内の特定の場所に届ける、連鎖反応の生化学的プロセスだ。

たとえば、特定のビタミンや化合物を食べると、他の分子に消化され、細胞プロセスを通じて他の分子に変化し、最終的に特定の神経伝達物質として脳に到達する。

研究者たちは、この新しい情報はマイクロバイオームの操作に関する正確な治療に焦点を当てた研究への道を開くと述べている。

糞便の分析を使用して、特定の介入に対して患者が長期にわたってどのように反応するかを確認できる機能は、将来の研究、そして最終的には臨床ケアを形作ることができる可能性がある。

「この研究で重要なのは、主要な兆候の特定だけでなく、長期的で慎重に設計された測定と、制御を含む将来の研究の必要性を特定した計算機分析でもあります」と SFARI 執行副社長のケルシー・マーティンは述べているとサイモンズ財団神経科学コラボレーションズは声明で述べた。

 

研究の詳細

メタ分析では 600組の子どもを比較した。

各ペアは、自閉症の子どもと、同年齢、性別の定型発達の対照児で構成されていた。研究者たちは、2 つのグループ間で存在量が異なる微生物を特定できるように、新しい計算手法を使用して各ペアを分析および比較した。

自閉症患者の脳では、対応する微生物経路を持った 95の代謝経路が示差的に発現されていた。「アミノ酸代謝、炭水化物代謝、脂質代謝に関連する経路は、重複する経路の中で不均衡に存在していた」と研究では述べられている。

機能的には、これらの経路は、プレボテラ属、ビフィドバクテリウム属、デスルフォビブリオ属、バクテロイデス属の微生物種で確認された。そして、それらは脳の遺伝子発現の変化、制限的な食事パターン、炎症促進性サイトカインのプロファイルと関連している。

この研究には、アダムス氏とローザ・クラジマルニク=ブラウン氏が主導した 2019年の長期糞便微生物叢移植研究(論文)が含まれているため、証拠はより強固なものとなっている。

この 2019年の研究もネイチャー誌に掲載され、自閉症児では全体的な微生物の多様性が低下し、プレボテラ・コプリとビフィズス菌が減少していることが指摘された。

2019年の研究では、18人の子供を微生物転移療法(糞便移植)で治療した。

その治療には、強力な抗生物質バンコマイシンによる 2週間の治療、腸洗浄、初回高用量 1回、および低用量の胃酸を伴う毎日の低用量の微生物転移の 10週間が含まれていた。

基本的に、被験者は腸内微生物叢を一掃され、健康なドナーの便の移植から新しい微生物叢を受け取った。

その結果、消化管症状が 80%軽減され、自閉症症状がゆっくりと着実に改善した。同じコホートの 2年間の追跡調査では、重度の範囲の自閉症の子どもたちの症状が大幅に軽減され、有益な細菌の数が高いままであることが示された。

 

検証

このメタ分析は、研究や観察証拠に基づいて、多くの臨床医や研究者が長年抱いてきた理論の大規模な確認を提供するものだ。

自閉症治療を専門とする医学機能医師のアルメン・ニコゴシアン博士は私たちに以下のように語った。

「これらは自閉症の子どもの腸内治療に信頼性を加えています。私たちは自閉症児の腸内治療を何十年にもわたって行ってきましたが、それに対して主流から多くの批判を受けてきました」

「そうは言っても、私たちはすべてを解明したわけではありません。しかし、自閉症の子どもの腸と脳の間には明らかなつながりがあることはわかっていました」

「主流医学がこの考えを受け入れれば、研究と治療にさらに道が開かれるでしょう。除去する必要がある、または増殖を促す必要がある特定の(腸内の)微生物に関するさらなる情報は、私たちにとって終わりのない探求です」

モートン教授は、これらは将来の研究のテーマになる可能性があるが、これまでのところ、自閉症の子どもたちに見られるパターンは、微生物の生態系全体がバランスを崩していることを示していることがほとんどだと述べた。

「自閉症における腸内細菌は非常に複雑であり、自閉症においてどの細菌が異なるかについては、さまざまな研究の間で意見が一致していません」

「答えは、それぞれの人たちが住んでいる地域にもよると思います。さまざまな病原菌が存在する一方、欠落している有益な細菌も存在します」

それでも、腸内毒素症は機能医学の分野でしばらく前から取り組まれており、自閉症の特徴を持つ人々の間で程度の差はあるものの成功を収めている。これは、食事を通じて微生物の環境を変えようとしている自閉症の子どもを持つ親たちの間でオンラインでも話題になっている。

 

親の直感

それは、2003年に生後 18か月で息子が行動退行を始めたジンジャー・テイラー氏の場合に当てはまる。

彼女の研究により、自閉症の子どもによく見られる広範な消化器系の問題が明らかになった。ある理論では、グルテンとカゼインがコミュニケーションや言語の問題、腕のバタつき、多動などの症状の一因となっているというものだった。

栄養についての知識がほとんどなかった彼女は、脳の健康のための健康的な食事についてより多くの情報を収集できるよう、数日間息子の食事を変えた。

すぐに、彼女の息子は正常な排便をし始め、アイコンタクトを維持し始めた。物議はあるものの、グルテンフリーとカゼインフリーの食事により症状が軽減されたと主張する多くの家族に受け入れられている。テイラー氏は、「飢えた脳を持つ子供たち」という本の中でこのことについて初めて読んだ。

(参考論文 / 英語) グルテンフリーとカゼインフリーの併用食が自閉症スペクトラム障害の小児および青少年に及ぼす影響

 

テイラー氏は以下のように述べる。

「消化器疾患は特に困難で、正しい診断も治療もされず、認識すらされないひどい痛みを伴います」

「この研究が受け入れられ、消化器疾患が自閉症に関係していることが確定されることを願っています」

現在、腸脳軸に関する多くの研究を含む自閉症研究に関するウェブサイトを運営しているテイラー氏は、おそらくこれが治療の進歩だけでなく、子どもたちのより良いスクリーニング検査につながる研究になるだろうと楽観視している。

しかし、彼女は懐疑的でもある。なぜなら、多くの研究があるにも関わらず、自閉症への取り組み方における体系的な変化を促す可能性のある消化器系関連性の深い受け入れに歴史的につながっていないからである。

たとえば、2014 年のメタ分析では、自閉症と消化器症状の間の決定的な関連性がすでに示されている。医学誌 Pediatrics に掲載されたこのレビュー記事は、15の異なる研究を調査した。

 

教育の改善

腸の問題を特定する責任は、家族がその問題に気づいていない可能性があり、医師に伝える責任がある傾向があり、医師はどのように治療を進めるかについての知識が不足していることがよくある。

自閉症児の評価と治療を専門とする小児胃腸科医アーサー・クリグスマン博士は、訓練を受け、自閉症を理解していれば、専門家は消化器系の徴候や症状を特定できるとエポックタイムズに語った。

同氏によると、自閉症の子どもたちは、叫び、泣き、たたいたり、物を壊したりすることで痛みを表現するという。彼らは、消化器疾患によく関連付けられるのと同じ普遍的な兆候をあまり使用しない。

「重度の腹痛や虫垂破裂を患っている患者が、腹部に手を当てようとしない場合があります」とクリグスマン博士は言う。「情報を伝達する能力は、たとえそれが言語ではなくとも、表に出るのです」

自閉症の子どもの腸組織を生検すると、共通点があると同氏は述べた。細胞と分子は、クローン病などの他の炎症性腸疾患とは異なり、独自に炎症を起こす。自閉症には、自己免疫を構成する独特のミトコンドリア、代謝、神経学的要素があると同氏は述べた。

「自閉症は医学的な病気です。精神疾患ではありません。腸が何らかの役割を果たしており、おそらく最も一般的な併存疾患です」とクリグスマン博士は語った。

「良いニュースは、医師が正しい診断を下すことができれば、クローン病が治療できるのと同じように、自己免疫疾患も治療できるということです」