講演会から離れてお話しに会った札幌医大の最先端技術を紹介します。
「脊髄損傷の新治療 保険適用で今月中旬から」2019年5月4日 7時29分 NHK
背骨の中の神経が事故などで傷ついて手足が動かせなくなる脊髄損傷の患者に、患者自身の特殊な細胞を利用して症状を改善させる治療が国に条件付きで承認されたため、札幌医科大学では公的な医療保険を適用した治療を今月から開始することになりました。
この治療法は、札幌医科大学などが開発したもので、事故などで脊髄が傷つき手や足を動かせなくなった脊髄損傷の患者を対象に、患者の体内から取り出した「間葉系幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞を培養して増やし、1億個ほどを血液中に戻して症状の改善をはかります。
国は去年、医療製品として、今後7年以内に改めて有効性を検証することなどを条件に承認したことから、札幌医科大学は今月中旬から公的な医療保険が適用して患者の受け入れを始めることになりました。対象となる患者は、脊髄を損傷してからおおむね1か月以内の重症患者に限られ、当面は年間100人程度を対象に行うということです。
細胞を供給する医療機器会社は、来年度以降、ほかの医療機関でも治療が行えるように体制を整えたいとしています。この治療法を開発した札幌医科大学の山下敏彦教授は「患者の『もう一度歩きたい』という思いに応えられる可能性がある非常に大きい治療だ」と話しています。
「札幌医大とニプロ、幹細胞で脊髄損傷治療」2019/1/17 15:00日本経済新聞 電子版
札幌医科大学と医療機器大手のニプロが開発した再生医療製剤が2019年中にも実用化する。幹細胞を使って脊髄損傷の症状改善を目指すもので、ニプロが札幌医大の近くに設けた拠点で製造する。当面は年間製造能力が最大100人分程度にとどまるため、ニプロは今後、製造能力増強のための設備投資も検討する。
実用化するのは細胞製剤「ステミラック注」で、厚生労働省が18年末に条件付きでの製造販売を承認した。患者の骨髄から採取した間葉系幹細胞を大量培養し、患者の体内に点滴で戻す。同細胞は幹細胞の中でも神経や軟骨に成長するもので、傷付いた脊髄神経の回復を助ける。臨床試験(治験)で患者13人に投与したところ、12人の症状が改善。目立った副作用はなかった。
ニプロはステミラック注の製造拠点「再生医療研究開発センター」(札幌市)を設置。札幌医大は19年春にも保険診療での治療を始める予定だ。治療の対象は脊髄損傷から約1カ月以内の重症患者。今後は7年以内に、より多くの患者の治療効果を検証する。効果が認められれば、ステミラック注の製造販売を続けられる。
札幌医大の本望修教授らの研究成果をもとにニプロが製品化する。製造拠点は再生医療研究開発センターのみで、熟練した医療技術者も必要なことから、年間製造能力は最大100人分程度にとどまる。今後は製造能力の増強が課題になる。
国内では毎年約5000人が脊髄損傷患者になり、延べ10万人以上いるとされる。ニプロは今後、再生医療研究開発センターでの増産投資も検討する。同社の佐野嘉彦社長は「(製造ラインの)自動化を進める」としており、量産体制が今後整えば、札幌医大以外の医療機関での治療にも道が開けてくる。
北海道は産業振興の重点分野の一つとして「健康長寿・医療関連産業の創造」を掲げている。北海道発の産業創出の成果としても、今後の事業展開に注目が集まりそうだ。