今日はIn Deepさんの2021年1月5日の記事を紹介します。
英国が「外出禁止令よりさらにレベルの高いティア5のロックダウン措置」を導入する中、その根拠とされるPCR検査には「最大で90%の偽判定」が存在する
本当は今回は、PCR 検査のことについて書かせていただくつもりだったのですけれど、前置きとして書き始めた「イギリスのロックダウン」についての部分が長くなりまして、PCR については次回の記事にさせていただこうと思います。
具体的には、アメリカ食品医薬品局 (FDA)が「PCR 検査は誤った判定結果をもたらす」と認め、検査のガイドラインを変更したのですね。
新しいガイドラインでは、 PCR検査は「症状の出た人だけ」に対して行い、濃厚接触者などでも発症していない人には PCR検査をしないようにと。そして PCR以外のテストも併用するなどの内容です。
それで思い出したのは、以前、米ニューヨークタイムズに掲載された、現在の設定数値(しきい値)では「 PCR 検査の偽判定率が 90%に及ぶ」という記事で、次回はそれもご紹介しようと思っています。
いずれにしても、現時点では、判定が非常に不確かな可能性のある PCR 検査の判定結果を「根拠」として、以下のようなイギリスのロックダウンが行われています。
途方もない惨状の扉を開けたイギリス
イギリスはもうすごいです。ここまでやるのかという感じでロックダウンを延長していますが、しかし、今回のは単なる「延長」ではありません。
日本では一般的に以下のように伝えられています。
英首相、イングランド全土の封鎖発表 スコットランドに続き
ボリス・ジョンソン英首相は4日、テレビ演説を行い、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める措置として、5600万人近くが暮らすイングランド全土を対象に全面的なロックダウン(都市封鎖)措置を再び導入すると発表した。施行は6日からで、2月中旬まで続く可能性がある。
英国ではこれに先立ち、スコットランド自治政府も同様の措置を5日午前0時から施行すると発表していた。 (AFP 2021/01/05)
これだけ読みますと、ロックダウンの再度の導入というだけのことのように思えますけれど、イギリス政府のニュースリリースを読みますと、「今よりさらに厳しい制限」が加えられようとしていることがわかるのです。
イギリスでのロックダウンレベルは「4段階」となっていて、内訳は以下のようになっています。
ところが何と、イギリスの保健当局は、1月4日に「ここにレベル5 (Tier 5)を加える」ことを推奨したとイギリス政府のニュースリリースは伝えています。
英国政府のニュースリリースより
英国共同バイオセキュリティセンターからのアドバイスに従い、最新のデータに照らし、4人の英国最高医療責任者と NHS イングランド医療ディレクターは、英国の警戒レベルをレベル4からレベル5に移行することを推奨している。
英国の医療制度の多くの部分は、すでに大きな圧力にさらされている。現在、コミュニティ感染率は非常に高く、病院や集中治療室に相当数の COVID 患者がいる。 (gov.uk)
どうやら「外出禁止令より高い警戒レベル」を設定しようとしているのです。いったい、外出禁止以上のどんな措置が考えられるのか不思議ですが、今後も感染確認数が減少しなければ、ティア5が導入されると思われます。
以前、「世界経済が「日本化」する中での…」という記事で、2020年12月24日の英国の封鎖状況を示しました。
それが 12月31日にはどうなったかということで比較しますと、以下のように拡大しています。
色が少し違いいますが、12月24日は、紫がレベル4で、赤がレベル3。12月31日で、濃い茶色(この部分全域に外出禁止令)がレベル4、赤がレベル3です。
英国のロックダウンのレベルの状況 / 2020年12月24日と31日
ここに新しい「色」(おそらくは黒になりそう)が加わり、イギリスで「外出禁止以上の行動制限が始まる」ことになりそうです。
もちろん、イギリスでは、ロックダウン後も感染確認数は増えっぱなしとなっており、以下の 1月3日までのヨーロッパ各国の感染確認数の推移のデータでは、イギリスは特にロックダウンを再開してからの増加ぶりが際立っていることがわかります。
感染確認数が急増している上位の5か国は「最も厳しいロックダウンか、夜間外出禁止令などの準ロックダウン」を厳格に施している国です。
それにしてもイギリス政府の発言を聞いていて「狡猾だなあ」と思う点がいくつかあります。
英当局の目論見は機能するか
先ほど、英国の保健当局が、
> 英国の医療制度の多くの部分は、すでに大きな圧力にさらされている。
とあり、医療崩壊の概念を漂わせていますが、実際には 2020年のイギリスの病床も集中治療室ベッドもどちらも「前年より大幅に使われていない」ことが、英デイリーメールが NHS (英国民保健サービス)のデータをグラフ化したものからわかります。
2020年と2019年のイギリスでの病院のベッドの占拠率
これは首都ロンドンを含むイギリスの「全地域」で同じ傾向、つまり「新型コロナウイルスの感染拡大が始まった 2020年のほうが前年度より病院の空きベッドが多い状態」であることが NHS のデータなどで示されています。
以下のグラフは、その数値からイギリス各地域の過去3年間の病院のベッドの平均占拠率と、2020年12月の占拠率を比較したものです。赤が2020年12月です。
2019年より 2020年のほうが病床の占有率が増えた地域はひとつもなく、多くの地域で、おおむね病床占有率は、60%から 70%ほどです。
このようにイギリスの病院の状態は空きベッドだらけですが、その中で「医療崩壊」だと大きく叫ばれており、現実と報道が非常に乖離していることがわかります。
特に大病院はガラガラのようで、先日、英グロスターシャー王立病院という大病院の病室や待合室を携帯で撮影していた英国女性が警察に逮捕されたという報道がありましたが、撮影されたその動画は、病院内に人がほとんど誰もいない光景が収められていました。動画はこちらにあります。
春になれば
もうひとつ「狡猾だなあ」と思ったのは、イギリスは、
「2月中旬までレベル5を含めたロックダウンを続ける」
としているのですが、これは、コロナウイルスがインフルエンザなどと同じように「気温で感染状況が変化する」ことを見越してのことだと思われます。
たとえば、インフルエンザは、年により多少の違いはあっても、おおむね寒くなる 12月ころから流行が始まり、2月を頂点として急速に流行が終息します。コロナウイルスも、2020年のパンデミックの状況を見ていますと、同じような傾向を持つようです。
2015年から2020年の東京のインフルエンザの流行状況
東京都ウェブサイト
イギリス当局は、コロナウイルスも、おそらくこのような推移と同じグラフになることを考慮しての「2月中旬までのロックダウン」としているのだと思われます。2020年の春のロックダウンは「気温が暖かくなると共に終了した」わけですが、それをまた繰り返すという感じですね。
そして、予定通りに上のようなインフルエンザのようなグラフを描けば、
「ロックダウンが流行を食い止めた」
と主張することができるわけで、先日も以下の記事で書きましたけれど、これだけ多くの人たちの心身と経済を破壊する措置を続けた上で、当局は、今さら「ロックダウンは間違いだった」とは絶対に言うことはできないはずです。日本の緊急事態宣言も同じでしょうけれど。
グレートバリントン宣言が当局から完全に無視されても、米スタンフォードの医学博士は主張し続ける。「ロックダウンは害悪でしかない」と 投稿日:2021年1月2日
コロナウイルスが気温の低下と共に感染が拡大する理由やメカニズムは、これまでわかっていなかったのですが、こちらの記事「「突然出現した」と騒がれる英国の新型コロナウイルスN501Y変異株は…」で少しふれましたけれど、最近、アメリカの複数の大学の科学者たちによる研究で、「コロナウイルスは気温が低いほど、粒子構造が安定する」ことがわかったのです。
寒いほど構造が安定し、感染活動が活発になる。
流行に適正な気温は、以前の記事「感染の増加を「数」だけで見ていると社会は終わる…」という記事で書きましたように、「 7℃以下」で爆発的に感染事例が増えることがデータとして存在します。
とはいっても、現在の北海道などのように気温が低すぎると、むしろウイルスは活動できないとは思いますので、「 0℃より高い低温」が最もコロナウイルスの感染拡大の時期だと言えるような気がいたします。
その時期に合わせてロックダウン、日本なら緊急事態宣言ということになったのでしょうけれど、目論見通りにいかない可能性もないではないかもしれません。
たとえば「春になっても寒いまま」だった場合、社会を閉鎖して春を待つ方法論は崩壊します。
2020年12月の世界の平均気温は「 0.26℃の急落」を示していまして、今後もこの状態が続くかどうかはともかく、ラニーニャ、太陽活動の低下、北極からの大気の頻繁な流入などが発生している現在の状況では、なかなか暖かくなる時が訪れないというようなことが起きる可能性はあるとは思われます。
しかし、今後数カ月の展開がどうであろうと、最もいやな予感としては、このコロナウイルスはすでに風土病というのか、つまり存在として一般の風邪のような「普通にどこにでも偏在するウイルス」になりつつあると思われ、そうだった場合、「秋になればまた流行する」ということになってしまいます。
どうすりゃいいのですかね。