今回はIn Deepさんの2025年9月3日の記事を紹介します。
「学校は子どもたちを狂気に導いている」
https://indeep.jp/an-age-where-children-are-going-crazy/
アメリカのブラウンストーン研究所のウェブサイトに寄稿された記事に、今回のタイトルにしたのとほぼ同じ「学校は子どもたちを狂気に導く」というものがありました。内容としては、アメリカの子どもや若者たちのメンタルヘルスについてが主なものです。
ちょうど先日、以下の記事で、抗うつ剤(SSRI)が、いかに若者たちの自殺念慮と暴力性の高まりをもたらせているかということについてふれました。
・トランスジェンダーとSSRI。そして若者の暴力性の増大
In Deep 2025年9月1日
そんなこともあり、このブラウンストーン研究所の記事をご紹介しようと思いますが、全体をただ翻訳するより、書かれてある文章にポイントごとに注釈(過去の資料など)をつけさせていただいて進めようと思います。
子どもたちのメンタルの崩壊はいつから加速したか
文章を書かれたのは、ジェームズ・ボバード氏という作家の方です。もちろん、内容はアメリカに向けてのものですが、日本の若い世代のメンタルの状況もある程度は同様だと思います。
たとえば、2024年の厚生労働省の人口動態統計では、
「10代から30代のすべての年齢層で死因の第一位が自殺」となっています。
2024年の死亡数(人口10万対)の年齢別の死因順位
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| 人口動態統計 |
原因や要因は複数だろうにしても、メンタル的に健康とはとてもいえない状態です。
医療マニュアルの MSD によれば、
> 自殺により死亡する人の約85~95%は、死亡する時点で診断可能な精神疾患をもっています。 MSD
とあり、自死にいたる段階で、何らかのメンタル疾患(最も多いのはうつ病)を持っていることが、医学的には明白なのです。
先ほどの人口動態統計の「死因の第一位が自殺」である日本の 10代から 30代はそのようなメンタルになっている人たちが多いということが示されるものだと思われます。
ブラウンストーン研究所の記事に入らせていただきます。
学校は子どもたちを狂気に導く
Schools Make Kids Crazy
James Bovard 2025/09/01
全米の公立学校の約 3分の1が、現在、生徒のメンタルヘルスを監視している。イリノイ州知事JB・プリツカー氏は最近、児童行動健康変革イニシアチブの一環として、イリノイ州の生徒 200万人に「ユニバーサル・メンタルヘルス・スクリーニング」を提供する法案に署名した。
しかし、この救済策は多くの生徒に悪影響を及ぼし、全国の保護者への警告となるだろう。マンハッタン研究所の研究員アビゲイル・シュリアー氏は、イリノイ州のこの新法により「何万人ものイリノイ州の子どもたちがメンタルヘルスの検査に押し込まれ、自分は病気だと思い込まされることになる。その多く、あるいはほとんどが偽陽性となるだろう」と警告した。
(※ 注釈)
これについて、米ニューヨークポスト紙は以下のように記していました。ここにある「抗うつ剤」というのは、ほぼすべて SSRI です。
イリノイ州のこのプログラムにより、精神疾患の診断を受けた後に薬物を投与される若者の数が確実に増加するだろう。
12歳から 25歳のアメリカ人に対する抗うつ薬の処方は、2016年から 2022年の間に 66%急増した。ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は最近、抗うつ薬はヘロインよりも中毒性が高いと嘆いた。
…2022年の研究によると、「精神疾患の診断を受けており、かつ現在、中等度/重度のうつ病や不安症状を抱えている大学生」は、「うつ病や不安症状が全く/軽度で、精神疾患の診断も受けていない学生」に比べて、自殺を考える可能性が 10倍、自殺未遂の可能性が 47倍高いことがわかった。
抗うつ剤(SSRI)の処方の急増は、先日の SSRI の記事にありますように、社会の暴力性を非常に高めます。
記事を続けます。
新型コロナによる学校閉鎖は、何百万人ものアメリカの若者のメンタルヘルスを破壊した。
2024年の JAMA誌(米医師会雑誌)の独自調査によると、2018年から 2021年の間に、摂食障害や自殺念慮による若者の緊急入院件数は約 300%増加した。自殺未遂は同時期に 250%増加した。
パンデミックの始まりから若者の間でうつ病や不安が急増したが、政治家や政策立案者は新型コロナ対策がもたらした精神的ダメージを無視した。
2021年のアメリカ疾病対策センター(CDC)の調査によると、高校生の 44%が「過去 1年間、悲しみや絶望感を継続的に感じていた」と回答している。女子生徒はうつ病になりやすく、男子生徒の 31%に対して 57%が「悲しみや絶望感を継続的に感じていた」と回答した。
学校閉鎖は、新型コロナの蔓延を阻止する上でまったく効果を発揮しなかった。学校が再開した後、生徒たちは不安を増幅させるだけの、馬鹿げたマスク着用義務を強制的に遵守させられた。
(※ 注釈)
2020年9月の In Deep の「世界中の多くの若者たちのメンタルヘルスの状態はそろそろ限界なのでは」という記事では、「アメリカの 4人に1人の若者が本気で自死を考えた」と回答したニューズウィークの記事を抜粋しています。2020年9月は、新型コロナのロックダウンと「ニューノーマル生活」が始まってから 6カ月ほど経った頃です。報道には以下のようにありました。
新型コロナのパンデミックが、米国の若者の心に大きな影を落としている。CDC がこのほど発表した調査では、若者の 4人に 1人は過去 30日間で真剣に自殺を考えたというショッキングな結果となった。
…また、ここ数年の間に銃を使用しての自殺が若者の間で急増していることも明らかになった。
そもそも、「ニューノーマル」ですけどね。当時の世界中の異常な状況を覚えてらっしゃいますでしょうか。
狂ってるでしょう。しかし、当時は「このような光景を誰も狂っているとは思わなかった」異常な時代でした。日本もそうです。これは、たった 5年前の話です。
他の当時の写真については、2020年9月の以下の記事にあります。
・「ニューノーマル」という名の異常な世界に放り込まれた世界の子どもたち
In Deep 2020年9月7日
こんな社会で何ヶ月か何年か暮らしていたのですから、メンタル的にダメージを受ける子どもや若者たちが出てくるのは当然でした。
続けます。
学校は、生徒たちに自分の体を疑ったり蔑んだりするよう際限なく説教することで、彼らの精神衛生を損なっている。
こうした学校の悪ふざけは、パンデミックが始まる前からすでに蔓延していた。2019年、メリーランド州は「生徒ひとりひとりの」「性自認と表現」を「価値あるものとみなす」ことを促進するための条例を公布した。
政府関係者と政治任命者は、メリーランド州でジェンダーを再定義する特権を自らに与えた。
州内最大の学区であるモンゴメリー郡は、学校制度に異議を申し立てて勝訴した保護者らが最高裁判所に提出した陳述書によると、「『LGBTQ+レンズ』を通してカリキュラムで使用する図書を選び、図書が『ステレオタイプ』、『シスジェンダー規範』、『権力階層』を『強化または破壊』するかどうかを問う」と発表した。
この報告書には、「教師たちは、(LGBTQ支持の)考えに反対することを『傷つける』と捉え、『マニキュアを塗る男性』や『ドレスを着る男性』といった例を挙げて反論するよう指示されている」とも記されている。郡教育委員会が認めているように、その目的は子どもたちに「親が簡単に反駁できないような新しい視点」を植え付けることだ。
この洗脳により、 モンゴメリー郡の学校では「ノンバイナリー」(男性・女性のどちらにも自分は属なさいと考える人)と自認する児童の数が 582%増加した。
この施策は大きな成果を上げ、生徒のほぼ半数がノンバイナリーを自認するようになった。しかし、ノンバイナリーの児童は精神疾患を患う可能性がはるかに高いのだ。
ある調査によると、トランスジェンダーおよびノンバイナリーの若者の 50%以上が 2022年に自殺を考えたことがあると回答している。
(※ 注釈)
これは先日の「トランスジェンダーとSSRI…」に示しましたように、
「トランスジェンダーの約 40% が自殺未遂を報告している」
という調査論文があります。
続けます。
現在の学校では、生徒が直面する他の危険を、奇妙な校内銃撃訓練を想定した訓練を通して大げさに誇張することで、精神衛生を損なっている。
インディアナ州では、「安全な学校」訓練の一環として、小学校教師が銃撃された。インディアナ州教師組合によると、保安官代理は教師たちに「一度に 4人ずつ部屋に入らせ、しゃがむように指示し、処刑スタイルでペレット弾を次々に発射した」という。
数人が血まみれになり、多くが悲鳴を上げた。組合は「教師たちは恐怖に震えていたが、何が起こったのか誰にも言わないように言われた。外で待っていた教師たちは叫び声を聞いて、一度に 4人ずつ部屋に連れ込まれ、銃撃が繰り返された」と訴えた。
ニューヨーク州グレートネックの学生新聞は以下のように報じている。
「学校ではますます廊下を本物の銃乱射事件の模擬演習に改造し、警察官が BB ガン (遊戯銃)を発砲し、演劇部の生徒たちが被害者役を演じ、偽の血痕や弾痕をでっち上げるといった事態が起こっている。時には、予告なしに教師や生徒に突然訓練が行われることもある」
ペンシルベニア州のある教師は、教師たちが偽の銃乱射犯にエアソフトガンで撃たれた後、「訓練を受けたというより、トラウマになった」とコメントした。「同僚が同僚を撃ったり、プラスチックの弾丸で撃たれたりしました。…人々は叫び声を上げ、逃げようとしていました。人々は互いにつまずき合っていました。本当に恐ろしい光景でした」と経験したひとりは振り返った。
こうした悪ふざけの最大の受益者の一つは、子どもたちに抗不安薬を売りつける製薬会社だ。
元警察官のレイフォード・デイビス氏は、学校銃乱射事件を想定したロックダウン訓練について、以下のように述べている。
「こうした模擬処刑儀式は、恐怖に基づく大衆社会統制を目的として実施され、トラウマを植え付け、恐怖、絶望、個人の無力感、そして権威者への依存を植え付け、救いと保護を求めるように仕向けるものです」
ジョージア工科大学の研究者による 2021年の 研究では、「学校銃乱射事件を想定したロックダウン訓練後、不安、抑うつ、ストレスが約 40%増加することが判明した」と報告されている。
学校が生徒に強制的に実施させるこれらの訓練は、 実際の危機においては、ほとんど役に立たないため (論文)、このような付随的な精神的ダメージは特に残念なことだ。
多くの学生が、監視から逃れる手段が実質的にないことを認識して落胆している。
学校は子どもたちにノートパソコンを無料で提供すると自慢しているが、それはオンラインで書き込んだ内容や行動をすべて追跡する電子足首モニターを着けているのと同じことだ。
最近の調査によると、学校が学生のオンライン監視を依頼する企業の大多数が、実際には学校支給のデバイスを使用して子どもたちを 24時間 365日追跡している。
そして、この調査では、企業の 29%が「オンライン行動に基づいて学生の『リスクスコア』を生成している」ことが明らかになった。
連邦政府の助成金政策における最近の劇的な変化は、ワシントンのメンタルヘルス介入が学生にどれほどのダメージを与えてきたかを示唆している。
今年 7月、アメリカ教育省は、連邦政府のメンタルヘルス助成金が「ジェンダーイデオロギー、政治活動、人種的ステレオタイプ、または特定の人種の学生に対する敵対的な環境を助長または支持すること」を禁止するガイドラインの改訂を提案した。
このようなことに対して新たなガイドラインが必要だという事実は、連邦政府の官僚がかつて広めてきた愚行を如実に物語っている。連邦政府の補助金を使って子どもたちに暗闇への恐怖心を植え付けるのを止めるために、新たな規制変更が必要になるのだろうか?
政治家、精神科医、そして公立学校は、メンタルヘルスを守る上で最も頼りになる場所ではない。
アメリカの若者は、何十年にもわたる虐待的で抑圧的な政策によって、すでに政治的・心理的な悪循環に陥っている。 政治権力と官僚権力の抑制こそが、アメリカを再び健全な状態に戻すための重要な第一歩だ。
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ここまでです。
アメリカの学校で、「校内銃乱射を想定した訓練」が行われていることは知りませんでしたが、 記事中にもリンクしました論文には以下のようにありました。
アメリカ教育省によると、米国の学校の 96.2%が、2019年から 2020年にかけて発生する可能性のある銃撃事件に備えるために、何らかの書面による計画を策定したと報告しており、現在 40州で学校における銃撃事件対策が義務付けられている。
とあり、ほとんどの学校で、銃撃対応訓練が行われているか、計画されているようです。
論文は、「子どもたちをこのような訓練に参加させるべきではない」と書かれています。
日本もある程度そうだと思いますが、子どもや若者たちのメンタルにダメージを与えている大きな要因は学校であり(場合によっては親あるいは社会そのものであり)、そして、その若者のメンタルの問題を悪化させているのが医療という図式はあると思います。
人によるとはいえ、SSRI もベンゾジアゼピンも、結果として、服用者に大きなダメージを与える可能性が高いものです。
しかし、現代の精神医療では、「投薬以外の方法が事実上存在しない」ため、メンタルに問題がある場合、ベルトコンベア的にその医療システムへ送られます。
いずれにしても、若い世代にとっては、大変なサバイバル時代となってきているようです。
