私はその時、実践研究会宮城支部長でもあり、テンメイの仲間を集い、私たちも石巻に毎月通い、片付けやら諸々の支援を行いましたが、その復興、再生は並大抵のものではありません。Sさんの覚悟と努力、忍耐の連続でしたが昨年、再生した造船所が開所していました。中々に伺えないままで居ましたので、今回は是非とも連絡していたのです。
私は震災の当時は生体システム実践研究会の実践部会の1つ「生命の泉を励起する会」の部会長をしていました。2011年の部会の基本方針は以下のようでした。
「当部会に託されている国土開発、林業、環境、家庭部門の実践活動を具体的に行うため、2010年度から実施している環境改善プロジェクト2件を継続し、フィールド調査とデータ収集、分析を実施します。
プロジェクトのテーマを「人の思考態の砂漠化を緑化します」と掲げ、万石浦の海洋環境改善プロジェクトと子どもの環境改善プロジェクトを継続。また、新たに山林の環境改善を視野に入れ、事前調査も実施。実践勉強会を通してデータを報告し、全国どのエリアでも提案できる事例として活動に取り組むとともに、部会活動を通して教育準拠位置を上げ、生命を励起する目的につなげます。」
ここに記されている「万石浦の海洋環境改善プロジェクト」は石巻市のSさんの絶大なる協力を頂き、着々と進められていました。そこで特別な情報コンクリートの球を万石浦の環境改善の手段として作成し、最後の大玉の作成半ばの時に津波に襲われたのでした。結果的にプロジェクトは中止になり数々のご迷惑を皆様におかけすることになりました。私も2011年度で6年間勤めた部会長を下ろさせて頂くことになりました。
しかし、2010年からスタートしたこのプロジェクトは皆さんの注目を集め、期待されていました。プレイベントも2010年6月に現地で開催されました。
その時のプロジェクトリーダーのTKさんのレポートを紹介します。
「このプロジェクトは石巻市万石浦の海洋環境を改善し豊かな海を取り戻すことを目的にしています。佐藤先生にアドバイスをいただき、「海洋改善情報球」をドック付近の海中に設置する予定で、その「情報球」を力丸コンクリートで制作しているところです。
6月13日に開催した現地視察会には、主に近隣の宮城県内から33人の参加がありました。
今回実践フィールドとなる佐藤造船所は三代続く船大工です。現在は佐藤文彦さんと弟の孝明さんが伝統の技を守っています。現在は、なかなか新造する船も少ないとはいえ佐藤兄弟の造船技術は高く評価されており、日本各地からの船の修理で多忙な中での視察会となりました。
万石浦 かもめが沢山飛んでいる |
海中のアマモ。ゆらゆらと美し |
造船所に面する万石浦は、牡鹿半島の付け根付近に位置する奥行きのある湖沼。古くは塩田があり、現在は海苔や牡蠣の養殖が盛んな所です。昭和40年代には地元の魚介類加工業者の排水で汚染された時期もありましたが、行政の規制などにより現在は水質が大分改善され、アマモが自生しています。アマモは水質が清浄な浅い海中に生える植物で、窒素やリンを吸収し、水質を浄化する能力があると言われています。また、波や潮の流れを和らげるため、砂が流出や巻き上がりを抑えるなど、稚貝の生育や稚魚が外的から身を守る隠れ家の役割を果たします。いわゆる稚魚のゆりかごとなり、万石浦から大海に巣立っていく重要な役割を担う場所と考えられています。
文彦さんは「この万石浦で育つ稚魚の環境を良くしたい。それが何世代にも渡る海の恵みを継続することにつながる」と言い、次世代へのつなぎ役として今何をしたら良いかと考えています。また木造船を作る仕事の中から人生も学べると言います。船を造る時は木材の癖を見て適した所に使うこと。また、自然に抱かれながら船に乗ると、自然にバランスをとり、自分の芯=生き方がわかるのだと。
情報球を設置するドック付近 |
情報球の型。大きい方は直径1m |
今回の視察会では、そうした自然への畏敬の念を持つ文彦さんの思いを共有し、プロジェクトの目的と手段を説明しました。海洋改善の方法として、万石浦の入り口に位置する佐藤造船所の裏手の水中にコンクリートの直径1mの情報球を設置。海草や微生物に作用する植物情報を入れます。その外側に直径50cmの中球を放射状に10個設置。さらにその外側に直径25cmの小球を10個設置し、情報の広がりを作ります。ここは、生活排水の流れの先なので、劣化した場所がどのように変化し、どう周りへ影響するか検証できるのではないかと思います。」