2019年1月18日金曜日

1553「会津10」2019,1,18

・「無」の会― 会津に新しい血を集めたい
「児島: 都会から来た人たちとか、いままで農業やったことのない、まったく違った人たちがここに来て農業をやる。会津に、新しい血、新しい知恵、科学、新しい価値観を入れていく。そこにおもしろい化学反応がおこって、ああっ!て何かに気づいて、都会の人も元気になって、生き方や、文化、文明までかわってくる。わたしは将来の希望をそこに託したいと思っています。
 いま、ひとり、若いのがうちに来てるでしょ。岡本君。余裕ができたら、またひとり人を増やして、そうやって最後は人をいっぱい育てること。だから、無の会という有限会社、農業法人にしたわけ。これはわたしの個人商店じゃないの。この組織に農地を集め、人材を集めて、わたし個人が死のうが生きようが、関係なく誰でもこれに参画できるでしょ。そういうふうにしていかないと人材育成もできないし、これからの農業は存続していけないと思う。

 だから、わたしは会津のこのあたりの土地全部を有機無農薬に変えたいの。この里すべてに蛍でもなんでも、生態系がよみがえって、生き物が全部生きられるようになる。孤軍奮闘で簡単ではないですけど、そのための第一歩が「無」の会というわけです。
 なぜ「無」の会なのかって、よく聞かれますが、わたしは無とか空(くう)とか、そういう仏教的な概念が好きなのね。きれいさっぱり何も無いって、きもちいいじゃないですか。
 で、何もないところから、自分で考えて、試行錯誤して農業やっていく。失敗しても失う物はなにもない。すべては無から生じる。まぁ、そんな意味を込めたといえば、もっともらしいですけど、単に好きなんですね、この言葉が。
 わたしの米で作ったお酒の名前は「風が吹く」(製造販売:白井酒造)っていうの。この「風」もね、わたしにとっては同じ様な意味合いの言葉です。ボブ・ディランもいいけどね(笑い)

 人工的なものはやっぱりダメです、最後には。わたしはね、昔、鯉の養殖業をやってたことがあるの。そしたらね、ビニールの中で鯉をそだてるのね。2週間で鯉が全部死んでしまった。やっぱり泥の池の方がいい。
 それから、もうひとつ。人工のエサね、これもダメ、とくにやりすぎると水がすぐくさって鯉が病気になってしまう。自然のミジンコとかボウフラとかあんでしょ、あれはいくら食べさせても、鯉が3倍のスピードで育って、しかも病気しない。つまり、自然のもので育てないと、生き物は健康に育たないのです。
 そういうことが経験的な知恵としてだけでなく、科学的・理論的にきちんと説明がつくようになるまで突き詰めていく。それがわたしが「無」の会でやりたいことです。

 わたしは元々は会津の高校の英語教師しながら、環境運動をやっていた。そこから自分で農業はじめるところまで、のめり込んじゃったわけですけどね。はじめの10年くらいは、自然農法にこだわって試行錯誤するけど何やってもうまくいかなくて、ホントにまいっちゃたけど、小祝政明先生との出会いで道が拓けました。
 <ジャパンバイオファーム(小祝政明)http://www.japanbiofarm.com/

 小祝先生の農業研究には勘だの経験だのじゃない、ちゃんと理論の筋の通った科学がある。しかも、それだけじゃない、有機農法でも自然農法でもやり方はひとつではないってことですね。その土地、土壌、風土、環境にあった臨機応変さがぜったい必要になる。
 だから、人に言われたことを、与えられたものを使って、まじめに黙々とやっているだけの、指示待ち人間ではダメなんです。夢中になって、自分で考えて、工夫して、変えていかないと。

 15年かかって、米作りについては、あとすこしというところまできました。そうだなぁ…あと2〜3年したら、わたしの理想とするおいしくて、しかも元気の出るクスリのような米を作るメソッドを確立できると思う。つまりね、わたしが自分で全部やらなくても、田んぼを広げて、人をやとって、それでも同じレベルの有機農法米を量産することができるようになる。そしたら、あとは資金の問題だけです。その前にまずメソッドを確立しないとね。面白いのはその過程なんですから。」