2019年1月26日土曜日

1561「会津18」2019,1,26

 西会津町にある西会津国際芸術村は山間の集落にあった中学校の廃校を改修して作られたものです。既に10年以上の活動がなされています。昭和村の喰丸小学校跡の再利用の在り方にも参考になりそうです。
 以下の様に紹介されています。

「西会津国際芸術村は、廃校となった木造校舎に海外から芸術家を招き、住居を兼ねたアトリエとして活用し、芸術を通した国際交流や、都市と地方を結ぶ交流の拠点として平成16年開村した、西会津町が管理する施設です。
 開村以来、リトアニア・ポルトガル・アメリカ・ドイツ・ブルガリア・クロアチアからの外国人芸術家や日本人芸術家が滞在し、創作活動を行いながら、近隣学校や近隣住民との芸術を通した交流を行ってきました。
 滞在芸術家事業の他、全国各地から作品が出展される「公募展」や、町内の名匠の作品や写真などを展示するギャラリーとして、また、版画や陶芸のワークショップや、地域に伝わる技術の体験もできる施設として、さらには、ジャズコンサートや講演会の開催など、様々なシーンで利用されています。
 芸術村内には、Wifiがつながる無料休憩所「じぶんカフェ」もあり、映画のセットにいるような雰囲気を楽しみながら、くつろげるスペースもございます。 木造校舎のもつ、柔らかさ、温かさ、懐かしさ・・・是非ご体感ください。」

 村にはスタッフが常駐していて責任者の矢部ディレクターが案内してくださいました。喰丸小学校と比べると規模は倍以上です。既に色々な芸術的活用、交流が行われてきて実績があります。
 丁度、展示の切り替えの時で今度の企画展の作品が並べられていました。ある意味で成功事例と思えますが、それぞれがその地域、風土に根差した活用が行われ、新しい人材の流入、地域の活性化に繋がれば良いのかと思います。










 以下は矢部ディレクターの取材記事ですので紹介します。
「~アートが人を呼び、人が人を呼ぶ~
 福島県の典型的な農村地域にアートを通じて人が集まっていると聞いて興味を持った。
 福島県の最西部、新潟県との県境にある西会津町。山間の平地に田んぼや畑が続く農業中心の町で、東京23区の半分の面積に89の集落があり、6300人が住む絵に描いたような過疎の町だ。その町の廃校になった中学校の木造校舎を利用して、西会津国際芸術村が設立されたのが2004年。設立当初から外国人アーティストを招き、アートを通じた国際交流を試みるとともに、全国に作品を募集する公募展を開催している。2018年の第13回公募展の期間中に訪問してみた。

 現在芸術村のディレクターとして活動の中心を担っている矢部佳宏さんに話を伺った。
 芸術村が設立される際、事業に関わった方から「世界中の芸術家を集め、アトリエとして提供したらどうか」との提案があり、その人が駐日の外国大使館と関係があったことから、外国人アーティストとの交流が始まったという。これまで外国人も日本人も合わせると、延べ200名近くがArtist In Residence(滞在アーティスト)として芸術村に住み、創作活動および住民等との交流事業に参加している。
 矢部さん自身は江戸時代から続く農家の19代目として西会津町に生まれた。長岡造形大学大学院で造形を学び、カナダのマニトバ州立大学大学院でランドスケープアーキテクチャーを勉強して、それぞれ修士号を取得している。カナダの友人とデザインチームを組んで、カナダと上海で事業を始めたが、震災後の福島が気になっていた時に、知人に誘われて、2013年4月から芸術村の2代目常駐職員となった。それ以来Artist In Residence事業や公募展など直接アートに関わる事業だけでなく、地域の文化や食に関するイベントも企画し、現代社会において失われつつある地域の文化や伝統的な農村の暮らしの知恵を再評価する試みも行っている。
 (1) その土地の個性を生かし、人と自然が調和した環境デザイン
 芸術村のある西会津町山間部は、高齢化が進み、人口が減少し続ける限界集落を多く抱えている。そのような状況下で、矢部さんが考える芸術村のコンセプトの1つは、農村に対する価値観の転換で、農村=不便から、農村=自然が多い・知恵が深い=素敵で楽しいへ変えて行くこと。
 2つ目は、クリエイティブな人材を集め、創造的に問題を発見・解決し、選択できる未来を増やすことで、これは大きな組織では評価され難いアーティストのような特殊な能力と魅力を備えている人が活躍するイメージだ。
 また3つ目は、「温故知新」ができる人材を育てること。つまり矢部さんの考えでは、人口が減ることはもちろん問題だが、文化のDNAが無くなって地域らしさを失うことの方がさらに問題なのだという。
 (2) 先人の知恵に学び、そこから新しい知識や見解を得ること
 人類の歴史に於いてアーティストたちは、これまでも失われていくものに価値を見出してきた。またアートは、文化、歴史、観光、教育や福祉など、いろいろな分野に横断的に関われるものであり、西会津に溢れている自然との相性もいい。矢部さんはアーティストとの交流の場として芸術村を利用し、そこに集まってくる人々が地域の人々と混ざり合うことにより、西会津に古くて新しいタイプの社会を起動させたいと考えている。」