四季循環もそうです。この年は春に向う予兆が現われはじめるとはいってもまだ冬なのです。「冬」の語源は「ふゆ(増ゆ)」なのだそうです。表面には現われていませんが、植物は冬の間に生命エネルギーを黙々とたくわえ増やしているのです。そして、春の季節が到来するやいなや、一気にその蓄えたエネルギーを開放して、芽吹き、花を開かせ、若葉を茂らせるのです。
今年はまだいのちのエネルギーを蓄える準備の年なのだということを忘れないようにしましょう。しかし、眉間にしわをよせて頑張るというのではなく、そんな尊い修行、やがて必ずやって来る春の季節のために着々と準備出来る立場にある自分や同志の人たちのしあわせを喜び、感謝するのです。
三爻の喜びは「盱豫 くよ 」です。「盱」は、「上目使いにながめること」だそうです。上に権力者の四爻がいるので、そっちの方ばかり気にして媚び諂い、権力者の意向を忖度して行動します。そしてうまく立ち回って自身が昇進出来ること、おこぼれがたくさんもらえることが、この人の「喜び」なのです。どこかの国の官僚でそんな人がいましたね。
また、そのように上の人にヘイコラする人はきっと部下には厳しく支配的にふるまうものです。易の神様は「君の醜い卑しい生き様にはやく気づきなさい。反省が遅くなるほど大変なことになるよ」と警告しておられます。
四爻の喜びは「由豫 ゆ うよ 」です。「由」は「頼り従う」という意味です。部下達はあなたを信頼して、あなたの指示に従って生き生き喜んで働いてくれます。そして業績もグングン上がります。そのように部下達が喜んで働いてくれている姿、業績が上がっている状態を見てあなたは「喜ぶ」のです。これが「由豫」です。
モノゴトがうまく運ぶのは素晴らしいことですが、そんな時ほど図に乗らないよう充分気をつけねばなりません。あなたはこの団体のトップではなくあくまで補佐役なのです。それなのに自分の成果を誇ってトップの座にある人をないがしろにしだしたり、独断専行し出したりしたらもういけません。
トップとも充分コミュニケーションをとって、提案するのはいいですが、方針を決定するのはトップであるということをしっかりわきまえて行動することです。調子のいい時ほど周囲に充分気配りし、謙虚な気持を忘れないことが必要です。
五爻には「病」があると示されています。トップの座にあり、事業も発展しているのに何を病むのでしょうか。それは、四爻の補佐役があまりに優秀で部下たちの信頼も厚いからです。自分と比べて嫉妬したり、組織を乗っ取られるのではないかと恐れたりします。
トップである自分が采配を振るって組織を思うままに経営して、世間の脚光賞賛をあびることが出来たらどんなにか面白いことでしょう。しかし、それは「エゴの喜び」です。組織のトップとしての役割は何でしょうか。その組織を繁栄させ、発展させることですね。
今、組織が成長してゆきつつあるなら、あなたがでしゃばることはないのです。補佐役や部下たちの働きに心から感謝して、部下達が成果を上げてくれていることを「喜び」としましょう。
そして、組織全体に目配りだけはしっかり忘れないで、少しでも疑問点や違和感が生じたら、すぐ対処する用意だけはしておきましょう。さらに、トップの座にあるものとして、何か組織に問題が生じたら、すべての責任は自分がとるという覚悟だけはしっかり腹に据えておきましょう。