この会の名称、ホロトロピックとは、グロフ博士の造語で「全体性に向かう」ということで、天外さんの言う「宇宙の根っこにつながる」と同じ意味です。自らを見つめ、精神的な充実を求める人々のゆるやかなネットワークです。
ホロトロピック・ネットワークについての紹介を書いた天外さんの文章があり、一部を紹介します。
「マハーサマーデイというのは、瞑想をして至福のうちに亡くなることで、病院で管だらけのスパゲッテイ状態で死ぬより、もうすこしましな死に方をしたいという、いわば「死に方研究会」でした。そんな不吉な会に人が集まるかしら、と思っていましたが、たちまち800人くらいの会員が集まり、今日まで活動が続いております。
「死に方研究会」とはいうものの、どうせ死ぬなら少しはまともな死に方をしたい、と思うだけで、ほのかに「死」と直面することができ、いま生きている「生」が改善されます。「死」と「生」は表裏一体なのですね。「死」から目を背けて、あたかも自分は死なないように思って生きているという事は、抑圧されてモンスター化している「死の恐怖」に支配された人生になってしまいます。文明人のほとんどはできていませんが、「死と直面する」という事は、人生の達人に向かう第一歩なのです。」
やがて死から医療、教育などに間口が広がって行きます。
「もう一つのテーマは「医療改革」でした。もちろんわれわれ素人が医療の中身に立ち入ることはできませんが、「病院」という存在に対する疑問が出発点にありました。病人が多いほど儲かる、治療が長引くほど儲かる、過剰な医療介入をするほど儲かる、などなど、多くの矛盾点があり、詳しく検討すると病院が存在することにより病人を増やしている、という傾向も感じられました。
そこで、「病院をなくす」という過激な医療改革を提唱しました。一般常識では、病気になって困っているときに救ってくれるありがたい存在と思われている病院を否定するわけですから、皆さんは驚かれます。病気になって治療してもらう病院に代わって、病気にならないようにケアする「ホロトロピック・センター」という概念を確立しました。「ホロトロピック」というのは、「全体性に向かう」、つまり仏教でいう「悟りに向かう」というのと同じ意味であり、トランスパーソナル心理学の提唱者、S.グロフ博士が自ら考案したブレスワークにつけた名前を、本人のご了承を得て借用しました。
また、重篤な病気を克服して名経営者に変容するケースをよく聞きますが、それは病気になることで、いままで抑圧していた「死の恐怖」に直面し、「実存的変容」と心理学が呼ぶ意識の成長を遂げるからです。ホロトロピック・センターでは、病気になったことは意識の変容を起こす絶好のチャンスととらえ、医療者がそれをひそかにサポートする、という役割も重視します。
病院では、病気が治って元の生活に復帰できれば成功ですが、ホロトロピック・センターはそれでは失敗です。せっかく病気になったのですから、一段上の精神的境地に着地する、というのが本来の姿と考えます。これは、私の独創ではなく、精神的な病に関してはユングなども言っていることです。身体的な病に関しても同じでしょう。
また、池見酉次郎医師は、がんの自然治癒には患者が「実存的変容」を起こす必要がある、と述べておられます。私は、病気が治るための変容ではなく、人の人生にとって意識の変容そのものが大切なのであって、病気はそのための絶好のチャンス、と逆から解釈しました。患者の意識の変容をサポートしたからと言って保険の点数はつかず、ひそかにサポートするので患者にも言えず、宣伝にも使えません。医療者にとって何のメリットもないのです。つまり、医療者が一定以上の意識レベルに達していないと、バカバカしくてこんな医療改革には興味はわかないでしょう。ところが、ふたを開けてみると、きわめて大勢の医療者の賛同を得て、いま札幌から指宿まで15の医療機関が、この方向に向かってご努力いただいております。
この医療改革が軌道に乗ってきたので、2004年には会の名称を「ホロトロピック・ネットワーク」にあらためました。」
今年の2月7日に20周年記念パーティーが開催された時に、私も参加してきました。その時の様子はブログの「582 20周年 2016,3,1」に書いてあります。
http://tenmei999.blogspot.jp/2016/03/582201631.html